さいきんはどうも不調だな

そうか、それで、またぞろどうでもいいこと独り言か

うん

どこが不調なんだ

わからん

わからんじゃわからん

わかってれば何とかするさ。ま、例によって更年期障害かなんかじゃないかな、とでも思っておくけどね

ま、そんなところさ。せっかく独り言はじめたんだから、なんか話、振れよ

finalventさんっていうブロガーがいて、彼、オレたちより少し上の55歳ぐらいなんだけどさ、さいきん本書いたじゃん

ああ、「考える生き方」ね。オレたち、あれが出る1年前ぐらいにたまたま彼をツイートで見つけて、そのときフォローして、それ以来、けっこう毎日彼のツイート読んでるよな

その本ってさ、いわゆる「老い」が一つのテーマになってるじゃん

うん

本を出して以来、なかなか評判がいいみたいで、読者のツイッターから辿って感想や書評だけはずいぶん読んだな

ああ、そろそろ買って読んでみるか

ああ

それで、その本がどうしたって?

別に。ただ、オレのものの考え方に近いところがあるな、とかねがね思っていたので、きっと読めば共感するだろうな、って思った

それだけか、言いたいのは

ああ

意味ないな

ああ

本当に不調のようだな

わかった。少し気を取り直すよ。さて、なんでこんなことを言い出したかというと、実は、さいきん、なんだかんだで韓国や中国を悪し様に言っている日本人の様がやけに目に付くようになってね。それで、ある人が、それはとりもなおさず日本が高齢化したからだ、と言うんだよ

そりゃそうかもな。日本の高齢化は世界ダントツトップだ

そう。あと、それだけじゃなくてね、その人はこうも言うんだよ。国力の落ちた日本をまざまざと見ているようだ、とね

高齢化でかつ落ちぶれ、か。きついな

そうだ、きつい言葉だよな。それでね、実はオレもそう思うんだよ。柔軟性と寛容の欠如というふうに見えるんでね。少なくとも、若くて希望と自信のある民族のすることじゃないよ

おまえいつだったか、日本と韓国なんかまるで同じな民族がいがみ合ってる気が知れない、とか放言してずいぶんあれこれ言われてたっけな

はは、そうそう。オレはね、あのときはなんだか言葉を選んでいろいろ受け答えはしてたけど、実はいまだって同じ放言をするよ。ことあの件については自分の言葉を撤回する気はまるでないね

そういうおまえも柔軟と寛容の心が欠けはじめてるのかもよ。え? そうじゃないのか?

まあ、そういわれるとそうかもな。ただね、オレは今までね、かなり意識的にさまざまの事ごとを自分の中で断罪するのを避けてきたんだよ

一種の現実逃避だな

ああ、そうだ。オレは、昔から、現実逃避というのをいい意味でとらえてきたよ

知ってるよ。ただ、オレたち自身が幼かったころ、そして若者だったころ、大人たちから現実逃避というのは悪である、と一方的に言われ続けてきたな

ああ、オレはそれがイヤで、まあ、わざとひねくれて現実逃避をよしとしたんだが、そのまま大人になっちゃったな

なんにせよ断罪を嫌う、というのはおまえの根本性質をひとことで現しているようなもんだが、それにしても、他の人間はおまえをそうは見てないと思うよ

なぜだ

だって、おまえほど、ときに極端に物事を断罪するヤツもいないんでね

オレはなにごとについても断罪した覚えはないぞ

いや、そういう物言い自体がすでに断罪の臭いがするよ。第一、おまえの言った、韓国中国を悪し様に言うやつらは同じ穴に落ちているだけだ、ということそのものが、一種の断罪じゃないか

しかも、民族の高齢化による痴呆に起因する怒りの抑制機能の低下とか、他国に追い越されてしまった落ち目な国の嫉妬とか、そういう理屈のことか

ひどいこと言うな、それこそが断罪であり、精神の硬直化だと思わないのか?

そうだ、思い出した。オレはその精神の硬直化というものをこれまで一番に嫌っていたんだっけ

そうだろ、それが、どうだ、え?

ふーむ、硬直した精神か。そのせいなのかな、不調なのは

え? どういうこと?

さいきん、なんだかんだで肉体的には衰えてるだろ

そりゃ、そうさ、54だもん

で、精神というのは一体、どうやって衰えて行くもんなんだろう。肉体と平行しているんだろうか、それとも乖離するんだろうか、それとも人によってはなはだしく違うんだろうか

そうだな。まあ、順当にいうと、変化しなくなったときが衰えと言えるだろうな

なるほどな、それは肉体で言うところの、動きが少なくなるということだな。節々が痛んで曲がらなかったり、敏捷じゃなくなったり、およそ柔軟じゃなくなることに相当するわけだな

ああ

じゃあ、年老いて醜くなって行くことは? つまりさっきいった動きじゃなくて、静止した容貌が落ちて行くこと。皺ができたり、色艶が悪くなったり、髪の毛がなくなったり、腹が出たり、そういうのに相当する精神の老いって、なに?

そっちの方は少し難しいな。いや、むしろ肉体のときと違って精神の容貌の衰えは、むしろ老いた精神の魅力にもなりうる気がするな

そうか、つまり、ものごとの動きと姿という二つの重要項目について考えると、肉体の老いは動けなくなり姿が落ちる、とあまりいい感じがしないが、精神の老いは、動きがなくなり姿が固まる、というある種の老成というかそういうものを感じるということだな?

うん。そして死に至って動きは完全に静止し、姿だけが後世に残って行く

まあ、なんだか分からんが、少しいい言葉を思いついたな。動きと姿、という

動きと姿、か

時間と空間の関係だな?

うん

それで、また突然思い出したが、きのうたまたまマイルス・デイビスの白黒のフィルムでマイ・ファニー・バレンタインを演奏していたのを見たけど、あのマイルスのソロはまさに、動きと姿、だったな

芸術家というのはたいしたものだ

動きと姿なんていうものをそのまま丸ごと音楽にしちゃったりするんだからな、本当にたいしたものだよ

ところで、おまえの不調の話はどうなったの?

あ、そうか。忘れてた。つまり、精神の老いに自然にしたがって、自分の精神はさっき言った動きと姿の関係に収斂してゆこうとしているのに、肉体のせいでそっちへ行けない焦燥感みたいな感じかな

肉体がなんで関係あるんだ?

あ、いや、社会的肉体のことさ。それがときに鎧のように重くて厄介なんだよ

なに言ってるかよくわからないな

まあ、だからこその、独り言、と

さっき言ってたfinalventさんの本にはそのへんいろいろ書いてるだろうな

うん、そうだと思うよ

そうこうしてたらカミさんが帰ってきたな

うん。あんた、何してんの、って言ってる

独り言も止めざるを得ないな。まあ、じゅうぶん長いし、あんまりおもしろくないし、止めどきじゃない?

そうだな。ビール2缶飲んで眠くなってきたしな

たった2缶でおねむか、ジジイだな

しかたないさ不調だしさ

ゆっくり休息するんだな

そうするよ



新どうでもいいこと18