焼き鳥

食い物を食べながら酒を飲むのはどこの国にもあるスタイルだが、日本の居酒屋は独特の発達をしておりその多彩さは世界でもトップレベルであろう。その居酒屋の中でおそらくいちばん昔からあり、一般的なのが焼き鳥屋である。鶏の肉、内臓、野菜などを一口大に切り、竹串にさして直火で焼いた、簡単な、どの国にでもある料理であるが、日本の焼き鳥は独自に発展しており、メニューも細分化され、安い店から高級店まで幅が広い。

焼き鳥は非常に一般的な料理なため、さまざまな形態で提供されている。大まかに分けると、焼き鳥を専門とした店舗と、一般の居酒屋がメニューに焼き鳥を入れている場合、そして、そのほかの屋台やお総菜屋での提供、になるだろう。ここでは、主に焼き鳥専門店での焼き鳥を取り上げる。焼き鳥屋は、外観にも内装にも特に目立った特徴はなく一般的な居酒屋と同じだが、写真のようにカウンターがメインな店が多い。

焼き鳥屋の店内。カウンターがメインの店も多く、カウンター内で焼いている。

焼き鳥屋の店内。カウンターがメインの店も多く、カウンター内で焼いている。(*)

カウンター内に直火のコンロがあり、そこで注文に応じて焼いて提供する。この直火についても、一般的なのはガスを使ったコンロだが、炭火のコンロで炭をおこして焼く場合もある。一般に、炭火の焼き鳥が美味であるとされており、備長炭など銘柄を指定して炭火焼をうたう店舗もあり、そのような焼き鳥屋はどちらかというと高級店の扱いである。ただし、いくら高級でも、焼き鳥は基本は庶民的な食べ物であり、それほど値段が高いわけではない。

yakitoriyaki

焼き鳥を焼いているところ。これはガスのようだ。(*)

焼き鳥の種類

焼き鳥の味付けには、醤油、味醂と砂糖などがベースとなったどろりとした黒いタレをかける「タレ」と、材料に塩を振りかけて焼くだけの「塩」の2種がある。一般には、注文するときに、塩かタレかを選んで伝えることが多い。材料によって塩とタレのどちらかが決まっている店もある。タレは長い年月調味料を足しながら使い続けることでその店舗独特のタレ味が生み出され、それが売りになっている店がある。一方、塩の方は味のごまかしがきかないので厳選された良質な材料と微妙な焼き加減を売りにする店も多い。

タレ

タレ(*)

塩

塩(*)

焼き鳥の材料は前述したように、肉、内臓、野菜である。肉は、腿、ささみ、手羽先、皮など、内臓は、レバー、砂ぎも、ハツ(心臓)、軟骨など、野菜は、葱、しいたけ、しし唐、銀杏、そのほか、挽肉を丸めたつくね、ウズラ卵などがあり、かなり種類が多いのがふつうである。以下が主要なメニューである。

もも 腿肉。正肉ともいう。
ねぎま もも肉とネギを交互に刺したもの
砂ぎも 砂肝。すなずりともいう。
レバー 肝臓
ハツ 心臓
なんこつ 軟骨。通常、胸肉の下の部分の軟骨を、肉が少し付いた形で切り取って使う
かわ 鶏の皮
ぼんじり 鶏の尻尾付近の脂が乗った部分
ささみ 一番柔らかく脂の少ないささみを焼いたもので、ワサビを塗って供されることが多い
つくね 鶏肉の挽肉に、葱などの薬味と調味料で下味をつけ、丸めて串に刺し焼いたもの。
手羽先 手羽先をうまく開いて串に刺したり、あるいは串なしで焼いて供されることもある
うずら卵 茹でたうずら卵を串に刺して焼いたもの
巻物 アスパラをベーコンで巻いたもの、ベーコンでミニトマトを巻いたもの、など
野菜 しし唐、しいたけ、ネギ(ネギだけのものをいかだとも呼ぶ)、銀杏、アスパラなど

以下にいくつか写真を載せておく。

ねぎま

ねぎま(*)

砂ぎも。すなずりともいう。

砂ぎも。すなずりともいう。(*)

nankotu

なんこつ(*)

つくねのタレ。卵の黄身がつくことがある。

つくねのタレ。卵の黄身がつくことがある。(*)

アスパラのベーコン巻き

アスパラのベーコン巻き(*)

注文は一本単位で、各自串をつかんでそのまま口でむしり取って食べる。食卓に一味唐辛子などが置いてあるときは好みでかけて食べることもある。複数人で食卓を囲んだとき、一人一串で多すぎるときなどは、最初に皿の上で串を抜いてしまい、みなで箸でつつくこともある。また、店によっては「盛り合わせ」が用意され、店のお任せで注文することもできる。一本一本順にコース料理のように出てくるところもある。

盛り合わせ。全部、塩。左から

盛り合わせ。全部、塩。左から、ぼんじり、ねぎま、ハツ、なんこつ、砂ぎも(*)

焼き鳥は簡単な料理だが、それだけにその味はピンからキリまでで、臭くてぱさぱさで味の悪いものから、炭の香りよく絶妙に焼かれた味わい深いものまでその質の幅は広い。このような単純な庶民料理を一種の芸域にまで高めるところは日本ならではあろう。ちなみに欧米など外国でもYakitoriという言葉はわりと知られているが、このYakitoriはほとんどの場合が、鶏肉に極端に甘い醤油タレをたっぷりつけて焼いたもので、日本のものとはかけ離れている。

焼きとん

焼きとんは、その名のとおり、豚の肉や内臓などを焼き鳥とまったく同じように串に刺して焼くものである。焼き鳥の分類に入れるのも変なのだが、焼きとんを焼き鳥屋で出すことも多く、むしろ焼きとんがメインの店でも焼き鳥と銘打っているところもある。であるから、ここで紹介することにする。

焼きとんは材料的にも鶏よりも安い材料を使うことが多く、焼き鳥より安価なのがふつうである。用いる豚の部位にしても、しろ(大腸)、ガツ(胃)、タン(舌)、ナンコツ(喉付近の軟骨)など内臓系の安いものを使う方がメインになる。調理法も塩とタレがあり、焼き鳥と同じだが、臭みの強い部位もあることからか、洋ガラシ、一味(七味)唐辛子、粉山椒、辛味噌、ワサビなどと一緒に出されることが多く、客は好みに合わせてこれらをつけて食べる。

焼きとんの盛り合わせ

焼きとんの盛り合わせ(*)

以下が焼きとんの代表的なメニューである。

しろ 大腸
かしら こめかみから頬にかけての肉
ガツ 胃袋
タン
レバー 肝臓
ナンコツ 喉のあたりの軟骨で、チューブ型をしている
豚バラ 焼きとんでは肉はマイナーな存在で、バラ肉とハラミがあるていどである。

 

 


(*) 画像はGoogleサーチで持ってきた無断転載である。写真撮影次第差し替え予定。