カレー

カレーはラーメンと並んで日本の代表的な国民食である。しかし、外食を中心とする大衆食として考えると、カレーを特別に売りにした店舗というのは少なく、いま現在では、チェーン店の、カレーハウスCoCo壱番屋、カレーショップC&Cなどがいくつか目に付く程度である。

専門店はあまり無いが、逆に、カレーライスというメニューは大衆食の至ることころに登場し、立ち食いソバ屋、定食屋、洋食屋、喫茶店、チェーン店レストラン、あるいは中華料理屋であってもカレーライスがメニューに入ることは多い。たくさんの大衆食ジャンルにくまなく浸透しているという意味で、まさに国民食と言えるのであろう。カレーは家庭料理にも十分に浸透しており、インスタントのカレールーが数多く出回り、家庭料理の定番でもある。

ここでは、主に外食で供されるカレーライスにつき、いくつか紹介することにしよう。

さまざまなカレー

kare

富士ソバのカレーライス。具がほとんど入っていないこともある。付け合せは定番の真っ赤な福神漬け(*)

これは、立ち食いソバ屋で出てくるカレーライスである。恐らくこれが、一番飾り気もしゃれっ気もない国民食としてのカレーに近い姿であろう。色は茶色で、とろみがあり、具は、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、そして少しの肉が入る。立ち食いソバのこれは、ほとんどレトルトの完成品が納入されたものか、あるいは、業務用のカレーフレークを使って簡易に作られたものであろう。

日本のカレーの歴史についてはWikipediaなどが詳しいのでそちらを参照していただきたいが、基本的に、オリジナルであるインドのカレー料理とは相当異なっており、いったんヨーロッパなど他国を経て日本に伝わったものと言われている。インドと異なる特徴は、小麦粉によるとろみがついていること、スパイスがマイルドなこと、甘味が入っていること、油の量が少ないこと、西欧のシチューに近い製法が取り入れられていること、などであろう。

福神漬け(右)とらっきょう(左)

福神漬け(右)とらっきょう(左)(*)

また、カレーライスには薬味というものが付きもので、日本カレーでは、福神漬け、らっきょう、柴漬けのみじん切り、などが定番である。特に着色料で真っ赤に色づいた福神漬けは、カレーの薬味以外ではほとんど登場しない漬物であり、面白い。

泉岳寺サンラインの英国風カレー。メニューはこれしかないこだわりのカレー。水を出さないカレー屋として一部に有名。

泉岳寺サンラインの英国風カレー。メニューはこれしかないこだわりのカレー。水を出さないカレー屋として一部に有名(*)

冒頭で述べたようにカレーだけを出す専門店はチェーン店が主で、あまり無いのであるが、ときどき、個人店舗によるいわゆるこだわりのカレー専門店が見つかることがある。この写真のカレーは、泉岳寺のサンラインのカレーである。牛肉や野菜をふんだんに使っているそうだが、最終的には固形物は残っておらず裏ごしをかけたポタージュのようなカレーである。

ずいぶん昔だが、ひところ、カレー作りが男の趣味としてずいぶんやられたことがあり、究極のカレーを追及するノリが高じて個人店舗としてオープンする、ということもあったであろう。当時はそのようなこだわりのカレー専門店が至るところにあったものだが、時代は進み、そのような店舗はだいぶなくなった。

新宿中村屋のインドカリー。このようにご飯と別に独特の金属容器に入ってくるスタイルも定番である。

新宿中村屋のインドカリー。このようにご飯と別に独特の金属容器に入ってくるスタイルも高級系カレーの定番である(*)

これは、中村屋のインドカリーである。新宿中村屋は明治時代から続く老舗であり、ここで当時初めて値段の高い欧風の高級カレーというものが出されたそうである。当時とは味も変わっているであろうが、今でも食することができる。まろやかで濃厚なカレーで、おそらく、ドミグラスソースやグレイビーソースなどを使っていると思われる。色は焦げ茶色で濃厚でマイルドで豊かな味わいである。

日本のカレーは、タマネギを炒めて水を加えて具を入れて煮たスープの中に、カレー粉と小麦粉をバターで炒めたルーを溶かし入れて作る。カレーの味の決め手は、やはりカレー粉であり、このカレー粉はいろいろな種類のものが売られている。もともとのカレー粉はターメリックが多く入り色が黄色いのが一般的で、そのせいで元来カレーは黄色いものであった。しかし、その後、飴色に炒めたタマネギが流行ったり、小麦粉を茶色く焦がすドミグラソース系が入ったり、また、カレー粉自体のブレンドもターメリック以外の香辛料を多く使うようになったりする中、黄色から茶色や焦げ茶に近い色に変わり、現在ではカレーは黄色よりむしろ、茶色が主流になっているようである。

牛八大井町店の名物スタミナカレー。豚とタマネギを煮たものとの合いがけになっている。

牛八大井町店の名物スタミナカレー。豚とタマネギを煮たものとの合いがけになっている(*)

カレーライスと他の料理の取り合わせはさまざまなものがある。これは牛八大井町店の人気メニューのスタミナカレーで、豚肉とタマネギを煮たものと合いがけになっている(牛丼との合いがけもあるが、豚の方が圧倒人気)。すき屋などの牛丼屋では、牛丼とカレーの合いがけは定番である。また、この牛八のカレーは、見ての通り、今時は珍しい、黄色の色が勝ったカレーである。

カツカレー

カツカレー(*)

カツカレーは、豚肉をフライにしたトンカツを添えたカレーであり、日本独特のカレーライスのバリエーションの定番である。なぜカツなのかはっきりしないが、この取り合わせは日本の大衆料理の傑作のひとつであろう。

カレーライスのバリエーションとしては、このほか、エビフライ、鶏のから揚げ、茹で卵、ハンバーグなどがある。また、ひところ、生卵を落として食卓のウスターソースをかけて混ぜて食べることが流行ったりしたが、これは大阪の老舗カレー屋の自由軒のカレーの影響であろうか。

大阪の明治時代よりある自由軒の名物カレー。カレーはあらかじめご飯にまぶしてあり、生卵とソースをかけて混ぜたから食べる。

明治時代よりある大阪自由軒の名物カレー。カレーはあらかじめご飯にまぶしてあり、生卵とソースをかけて混ぜてから食べる(*)

また、カレーは元来、辛いもので、辛さを調節してオーダーすることもふつう行われている。辛くない順に、「甘口、中辛、大辛、激辛」などという名前がついていてオーダーの時に指定する。厨房では、トウガラシ油やカイエンペッパーなどを加えて指定の辛さを出しているようである。1980年代に起こった激辛ブームのときは、辛さを競い合い、極端に辛いカレーを出す店で溢れ返ったが、現在は落ち着いている。


(*) 画像はGoogleサーチで持ってきた無断転載である。写真撮影次第差し替え予定。