うどん

うどんは蕎麦と並んで日本の代表的な麺である。しかし、東京はうどんより蕎麦が盛んな地域であり、うどんはどちらかというと関西、そして昨今では香川県の讃岐うどんが有名である。東京の蕎麦屋ではほとんどのメニューで蕎麦をうどんに替えることができるようになっているが、蕎麦が専門なだけにうどん玉はおざなりなことも多い。

一方、うどんを専門とするうどん屋を銘打つ店は蕎麦屋よりは少ないが東京にもある。とはいえ、東京うどんとして特色のあるものはほとんど無く、一番多いのは讃岐うどん、その他に少数ながら武蔵野うどんなどがあるていどである。店舗的な特徴はあまりないため、ここでは、東京で見られるそれらのうどんについて一通り紹介しよう。

讃岐うどん

日本のうどん消費量ナンバーワンは香川県であり、讃岐うどんは全国的に有名である。東京にも讃岐うどんを銘打つ店は昔からあるが、ここ十年ぐらいでブームになり、店舗は急速に増えた。その一因はやはりチェーン店による店舗展開であろう。東京では、はなまるうどんと丸亀製麺の二つが有名であり、かなりの勢いで店舗が増えたため、今ではどの駅でもすぐに見つかるほどである。

讃岐うどんの食べ方には、かけ、釜揚げ、ぶっかけ、生醤油、などいくつかある。以下はもっとも一般的な食べ方の、かけである。

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讃岐うどんのかけ(*)

讃岐うどんは、小麦粉に濃い目の塩水を加えて打ったもので、太めで、コシが強い麺が特徴である。ただし、讃岐うどんが東京で流行ってからは、この「コシの強さ」がアピールされ過ぎている感じが無いでもなく、全国のうどんで讃岐うどんが特別にコシが強いというわけではない。だしはカツオだしが基本で、醤油色は薄めである。薬味は青ネギと天かす、おろしショウガなどである。

次は釜揚げである。

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讃岐うどんの釜揚げ(丸亀製麺より)(*)

釜揚げは、生麺をゆであげたものを水洗いせず、少量のゆで汁とともにそのまま出す。濃い目の熱いだし汁が別に出され、これにつけて食べる。茹であがったのち水で絞めないのでコシは少なく、代わりに表面がぬるっとしていてもちもちした食感が特徴である。

次はぶっかけである。

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讃岐うどんのぶっかけ(*)

ぶっかけには熱いもの冷たいものなど、いろいろな種類があるが、基本は、麺の上に少な目の濃い目のだし汁をかけ、その上に薬味の青ネギ、大根おろしなどを乗せたものである。麺は水で絞めてあり、コシの強さが味わえる。濃い目のだし汁の代わりに、ほとんど生の醤油と同じ濃さのものを少量かけて、これに青ネギ、大根おろし、天かすなどを乗せ、すだちを絞ったものもあり、これは生醤油と呼んだりもする。

全国展開しているチェーンの、はなまるうどん、丸亀製麺、ともにセルフサービス式の提供をしている。これは、もともとは本場の香川県でよくやられている方法だったが、これを積極的にチェーン店で取り入れ、今ではきわめて一般的な方法になっている。

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丸亀製麺のセルフサービス式の店内(*)

レールにトレイを乗せ、最初に、かけ、釜揚げ、ぶっかけ、などを告げて注文し、出汁のかかった麺を受け取ったのち、青ネギ、天かす、ショウガなどを自分でトッピングし、その後、各種天ぷらや卵、おにぎり、いなりなど好きなものをトレイに乗せ、会計へ進む。

武蔵野うどん

武蔵野うどんは、多摩地方から埼玉にかけての郷土料理としてのうどんで、あるとき、店舗として東京の中央に現れたもののようである。多摩地域は東京なので、この武蔵野うどんこそが強い特色を持った東京うどんと言えるかもしれない。

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武蔵野うどん。これは肉汁うどん(*)

武蔵野うどんの麺は、讃岐うどんよりさらに太く、色は少し灰色がかった薄い蕎麦色をしており、かなりコシが強い。水分を少な目に打ち、その太さとも相まって、硬めでゴツゴツした食感が特徴である。色を見て分かるように、真っ白でないのは使われる小麦粉のせいであろう。そのせいか麺の味は、讃岐うどんなど他の滑らかなうどんと違い、小麦粉の味をそのまま味わっているような感じである。

ダシは、熱い、多めのだし汁が別に出され、これにからめて食べるのが一般的である。出汁の味はかつおダシが主で、醤油も砂糖も多めである。ただし、東京のかけソバのだし汁のような真っ黒で醤油臭いものではなく、カツオのダシ味がかなり強く効いた濁った感じの汁で、小麦粉の味のワイルドな太麺とうまく釣り合っている。具はネギ、油揚げ、豚肉、キノコなど。特に豚肉がふんだんに入った肉汁うどんに人気がある。

大阪うどん

本サイトは東京の大衆食を紹介しているが、冒頭でうどんは主に関西と書いたので、最後に関西の大阪うどんを紹介しておく。大阪のうどんは讃岐うどんとも武蔵野うどんとも異なって独特だが、大阪ではもちろん普通に食べられる。

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大阪のきつねうどん(*)

特徴は麺にコシがまったく無くもちもちした感じで柔らかいことと、ツユの色が薄くかなりダシ味が強いことである。麺の断面は讃岐うどんが包丁の切りあとによる角型なのに対して大阪のそれは円になっていて、わりと太めで、柔らかく茹でてあるせいもあり縮れた感じが全くなく、すんなり丼に収まっている。ダシは、ウルメ節やサバ節、カツオ節、コンブなどさまざまなものを使って濃く仕上げるそうだ。具は煮上げた油揚げを乗せたきつねうどんが最もポピュラーで、関西の青ネギが乗る。一般に関西では天かす(揚げ玉)は食卓にあり、取り放題である(東京では天かすは「たぬき」として追加料金を取る)

讃岐うどんが日本中で流行ってしまったせいで、コシの無いうどんがよく思われない傾向があるような気がする。大阪でも讃岐うどんがかなり進出しているようだが、古い伝統の味は残して欲しいものだ。東京にも大阪うどんを出す店は無いことはないが、ごく少数である。


(*) 画像はGoogleサーチで持ってきた無断転載である。写真撮影次第差し替え予定。