ラーメン

ラーメンはいまや代表的な国民食であり、昨今は寿司と並んで外国でも人気が出始めている。

もともとは、中国から伝わったスープ麺(湯麺:タン・ミェン)が起源で、日本では支那そばあるいは中華そばと呼ばれていた。当初は、地方によってあるていど特色のあるラーメンを出す、大衆料理店としてのラーメン屋があるばかりであった。この手の特に目立たない町のラーメン屋については中華屋の項で紹介している。

それが、あるときから、ラーメンそのものがにわかにクローズアップされ、その店の売りとなる特別なラーメンを銘打ったラーメン専門店が増え始める。調べてみると1980年代以降のことのようである。それ以降、ラーメン専門店は増え続け、一つの町にいくつもの店が乱立する状態になり、工夫を凝らして互いに競争するラーメンバトルが繰り広げられるところまで行き、今に至る。

この特殊に発達したラーメンをここで網羅的に紹介する必要はないだろう。ラーメンはいまだに大衆食とはいえ、ラーメンバトルはチェーン店の大幅な進出とも相まって、ほとんどグルメの一分野に成り上がった観がある。ラーメンに関する本、雑誌、Webサイトは多数あるので、詳細はそちらに譲って構わないであろう。

ここでは、主だったラーメンの種類を紹介することで、おおまかなラーメンの姿を語ることにしよう。

醤油ラーメン

それでは以下に主なラーメンの種類を一つずつ紹介する。始めは醤油ラーメンである。

醤油ラーメン。チャーシュー、メンマ、ネギ、海苔、そして真ん中に半熟に作った煮卵が乗っている。

醤油ラーメン。チャーシュー、メンマ、ネギ、海苔、そして真ん中に半熟に作った煮卵が乗っている(*)

醤油ラーメンは、東京でもっともポピュラーなラーメンで、中華屋の項でも紹介している。東京ラーメンと呼ばれることもある。鶏ガラや豚骨、各種野菜などでダシを取り、ここに醤油と塩、コショウ、化学調味料などで味をつけ、スープは澄んで茶色をしている。麺はかん水を使った黄色い中華麺、トッピングには、チャーシュー、メンマ、なると、ほうれん草、海苔、刻みネギなどが入る。

醤油ラーメンのスープには、鶏や豚のほかに、そばうどんのダシで使用する、かつお節、昆布、煮干などの和風のダシを合わせて独特のコクを出すことも多い。和風のダシ味がある一定量を超えると、和風ラーメンと称され、通常の醤油ラーメンと区別されることもある。

塩ラーメン

塩ラーメン。チャーシュー、メンマ、水菜、ネギ、ゴマが乗る。目黒のあいうえおより。

塩ラーメン。チャーシュー、メンマ、水菜、ネギ、ゴマが乗っている。目黒のあいうえおより(*)

醤油ラーメンのスープの醤油を抜き、塩だけで味付けしたものが塩ラーメンである。醤油が入らないのでスープの色づきがなく、澄んだ感じになっている。醤油のうまみがなくなるので、その分、ダシの味で補わないとなかなかおいしい塩ラーメンにならない。そのため、かつお節、昆布、あるいは、煮干や干し貝柱などの魚介、各種野菜などでダシの味を補強することも多いようである。また、最後に香り油を入れて香りをアップすることも多い。香り油は、ゴマ油やラードにネギやショウガ、ニンニクといった香味野菜の香りを移して作ったりする。

以上、醤油でごまかしがきかない分、丁寧に作らなければおいしいものは難しく、塩ラーメンを売りにしている専門店はさまざまに工夫をしているようである。

味噌ラーメン

味噌ラーメン。モヤシなどの野菜とともに、コーンと煮卵がトッピングされている。

味噌ラーメン。モヤシなどの野菜とともに、コーンと煮卵がトッピングされている(*)

スープの味付けに味噌を使ったラーメンである。日本は味噌の国であり、さまざまな味噌が全国で作られており、これらを独自にブレンドして作るようである。また、味噌ラーメンでは、トウガラシを加えて辛味を出したものもよく見かける。ダシ自体は前述の醤油や塩と同様に、鶏ガラ、豚骨などで取る。味噌ラーメンの場合、中華鍋で、最初に豚肉やモヤシなどの野菜を炒め、そこにスープと味噌ダレを加えて全体の火を通し、これをゆで上がった麺の上にかけるという作り方をするところも多いようである。

中国においても各種味噌が日常的に使われているが、スープ麺に味噌を入れることはほとんど聞かない。日本の味噌ラーメンはおそらく味噌汁の発想を延長して生まれたものであろう。これに加え、コーンやバターを乗せるなど、全体に日本オリジナルなものとして味噌ラーメンは大衆食の傑作と言えるだろう。

豚骨ラーメン

豚骨ラーメン。チャーシュー、キクラゲの細切り、青ネギが乗る。

豚骨ラーメン。チャーシュー、キクラゲの細切り、青ネギが乗る(*)

東京では、前述した醤油、塩、味噌の三つが、かつてのラーメン屋の定番であり、実際、町のラーメン屋ではこの三種をメニューに並べる店が今でもけっこうある。そんな中で、九州方面から伝わってきたのがこの豚骨ラーメンである。

豚骨ラーメンはスープに特徴があり、濃厚で白く、いくぶんドロっとしている。これは、大量の豚骨や鶏ガラなどを強火で、圧力鍋のようなものを使って過度に沸騰した状態で長時間煮込むことで作られている。骨に含まれる骨髄やゼラチンがすべて溶け出し、白濁したドロっとしたスープが取れる。この白濁したスープに、ちじれの無い細麺、チャーシュー、キクラゲ、青ネギ、紅ショウガなどをトッピングする。

このラーメンは当初は九州方面のローカルラーメンだったようだが、東京に進出し、あるとき大はやりし、そのまま東京に定着した。今ではチェーン店も含め、至るところでこの豚骨ラーメンの店を見ることができる。

つけ麺

つけ麺。つけダレにチャーシューなどの具が入っている。

つけ麺。つけダレにチャーシューなどの具が入っている(*)

ラーメンのいわゆる冷やしは、冷やし中華であり、これについては中華屋の項で紹介している。冷やし中華はラーメンの麺をゆでて冷やし皿に盛り、これにキュウリなどの野菜を乗せ、醤油味の甘酢タレをかけたものである。ただこの冷やし中華はなぜかラーメン専門店で扱っているのをほとんど見ない。冷やし中華はいまだに町のラーメン屋のメニューのようである。

その代わり、ラーメン専門店において冷やしに相当するのがこのつけ麺である。麺はゆでて冷やし、別皿に盛り、つけダレがつき、このタレに麺をつけて、ちょうどザルそばのように食べるのがつけ麺である。つけダレはそのラーメン店のスープたれに工夫を加え作られていることが多いようである。タレにはラーメンに入るはずのチャーシューやメンマ、ネギなどが入っていることが多い。また、若干の酢を加えているところも多い。

つけ麺専門店というのもあるが、ラーメン専門店がつけ麺を用意しているという場合が多い。麺を食べ終わった後、そば屋の蕎麦湯のように薄め用のスープを出し、タレを薄めて飲めるようになっている店もある。

そのほかのラーメン

以上が定番のラーメンであるが、ラーメン専門店がこれだけ増えた今、とても紹介しきれないほど多様なラーメンが発明され、どれにも分類できない独自のラーメンで勝負する専門店が次から次へと現れている状態である。また、日本の各地で特色ある独自ラーメンがあるので、それが東京に進出することも多い。古くは札幌ラーメン、そして博多ラーメン、喜多方ラーメンなどが有名である。

東京のご当地ラーメンで有名な店には、次のラーメン二郎がある。

ラーメン二郎。写真は三田本店のもの。大量の厚切りチャーシュー、スープに厚く溜まる背脂、山盛りのモヤシキャベツが特徴。

ラーメン二郎。写真は三田本店のもの。大量の厚切りチャーシュー、スープに厚く溜まる背脂、山盛りのモヤシキャベツが特徴(*)

もともとは港区三田にある店舗が元祖で、すでに創業40年を超えているようである。のれん分けにより二郎は現在かなりの店舗数になっている。自家製の太麺、脂が多く濃厚なダシに醤油味で、トッピングにモヤシやキャベツなどの野菜、厚切りチャーシューが山盛りに乗り、非常にボリュームがあるのが特徴である。味は醤油とも豚骨とも言い難く独特で、二郎フリークを生むほどに一部に非常な人気がある。

2000年ぐらいからだったと思うが、次のタンタン麺がはやった時期があった。

タンタン麺。スープはゴマ味で、赤く見えるのはラー油。炒めた挽肉、ネギがトッピングされている。

タンタン麺。スープはゴマ味で、赤く見えるのはラー油。炒めた挽肉、ネギがトッピングされている(*)

タンタン麺は、鶏ガラなどで作ったダシに、芝麻醤(白ゴマをドロドロにすりつぶしたもの)、醤油、酢、山椒などで味をつけて麺にかけ、ラー油を加え、炒めた挽肉、ザーサイ、ネギなどを乗せた辛いスープ麺である。

タンタン麺は、担担麺と書き、もともとは四川料理で、本場のものは汁のほとんどないあえ麺である。日本に四川料理を広めた故陳建民氏が日本人向きにスープ麺にアレンジしたのが日本のタンタン麺の始まりのようである。四川飯店グループでは長い間このタンタン麺が供されていたが、あるとき街中にこれが進出し、ちょっとした流行になり、タンタン麺専門店が増えた時期があった。現在はブームは落ち着いているようである。


(*) 画像はGoogleサーチで持ってきた無断転載である。写真撮影次第差し替え予定。