喫茶店はずいぶん古くからあるが、最近はこの言葉自体をあまり聞かなくなった。喫茶店はその名のとおり元々はお茶を飲むところであったと思われるが、日本茶ではなくコーヒーや出す店をさし、和風のいわゆる「お茶」を出す店は「和風喫茶」として別扱いになることが多い。
日本の喫茶店は、コーヒーを飲みながら、くつろいで時間をつぶしたり、友達としゃべったり、ちょっとした商談をする所で、そういう意味で西洋の「カフェ」と似たものである。
喫茶店という言葉を聞かなくなった理由は、1990年代ごろから急速に増え始めたチェーン店系コーヒー店のためであろう。2000年ごろには現在の、ドトールコーヒー、スターバックスコーヒー、タリーズ、ベローチェなど主要店が出揃い、昔ながらの喫茶店はこれらの店に置き換えられて行った。個人営業の昔ながらの喫茶店はなくなってはいないが、ちょうど街の商店街の八百屋のように、小さな町に1つか2つという程度の店数になっている。
喫茶店の店舗
一昔前にそこらじゅうにあった喫茶店は、ちょうど町のそば屋のように、だいたい似たようなルックスと店内とメニュー構成になっている。
これは典型的な街の喫茶店の外観である。コーヒー店に駆逐されたといっても、東京の小さな町、あるいは東京を離れた地方都市や町へ行けば、ほぼ必ずこの手の古風な喫茶店を見つけることができる。
ガラスばりで外から見えるようになっており、木の感じを残した外装と内装であることが多い。看板には「喫茶」と記していることが多く、その店のネーミングにもなんとなく共通した感じが漂い、カトレアとかマロンとか横文字のカタカナ店名が多かったりする。
こちらは店内である。カウンターがありオープンキッチンのこともあるが、基本はテーブルと椅子を並べており、友達どうしでおしゃべり、あるいは商談などがしやすいようにアレンジされている。時間つぶしの利用も多いので、雑誌や新聞、漫画などが置いてあることも多い。
喫茶店の飲みもの
喫茶店の飲みものの基本は、コーヒーと、紅茶と、ジュースである。以下に典型的な喫茶店の飲みものメニューをあげる。
熱い飲みもの | |
コーヒー | コーヒー専門系喫茶店では一杯一杯ドリップやサイフォンで淹れることもある。アイスと区別するためホットコーヒー、あるい は単にホットとも呼ぶ。砂糖とミルクが付く |
アメリカン | 本来は浅煎りのアメリカンの豆で淹れる薄くて量が多めのコーヒーだが、古い喫茶店ではコーヒーをお湯で薄めて出すことも 多い |
カフェオレ | 最初からミルクが入ったコーヒー。砂糖を入れて飲む |
紅茶 | ミルクティーかレモンティーかを注文時に聞かれることが多い。レモンティーの場合、レモンの薄切りが一枚付く |
冷たい飲みもの | |
アイスコーヒー | 冷やして氷を浮かべたコーヒー。ミルクとガムシロップが付く |
アイスティー | 冷やして氷を浮かべた紅茶。ホットと同じくミルクかレモンか選ぶ。ガムシロップが付く |
ジュース | オレンジ、グレープフルーツなど |
スカッシュ | 炭酸の入ったもの。レモンスカッシュなど |
フロート | 以上の飲み物の上にバニラアイスを乗せたもの |
コーラ | 市販飲料のコーラやサイダーに氷を浮かべストローをつけて供する |
喫茶店では席につくと、まず氷入りの水が出される。卓上には、砂糖が置いてあることが多い。最近は紙ナプキンが置いてあることが多いが、以前は「おしぼり」が出てくるのがふつうであった。
ちなみに喫茶店にはふつうアルコール類は置かない。その昔「純喫茶」と称する喫茶店があり、アルコールを置く喫茶と区別されたことがあったが、今ではその言葉自体をほとんど見かけない。
喫茶軽食
喫茶店には食べものも置いているが、基本的には「軽食」が主で、ちょっとつまむていどのものであることが多い。ただし、これは店によってまちまちで、特に昼食時にランチメニューとして、わりとボリュームのある料理を出す店もある。ただ、喫茶店の店主は基本は飲みもの系のプロなせいか、食事は家庭料理の延長を出すことが多いようある。
以下は喫茶店の軽食と、ランチメニュー的な料理の主なものである。
トースト | 食パンをトーストしバター(マーガリン)やジャムと共に出す |
サンドイッチ | 内容により、ハムサンド、卵サンド、野菜サンドなどがある |
ピザトースト | 食パンの上にケチャップ、野菜、溶けるチーズなどを乗せオーブントースターで焼いたもの |
スパゲッティーナポリタン | スパゲッティーをケチャップで炒めた喫茶店独特の料理 |
ピラフ | 米、エビ、ミックスベジタブルにコンソメの素を入れて炊き込んだような感じのものが多い。 |
家庭料理 | ハンバーグライス、豚のしょうが焼き定食、カレーライスなど |
喫茶店の料理にはどことなしに独特な共通点があり、特に次のスパゲッティーナポリタンはそのなかでも大衆料理の傑作の一つであろう。
これは、元来はイタリアの麺であるスパゲティのイタリア式の調理法がまだ日本に定着していなかったころに作られていた料理である。イタリアのパスタのコシのある感じではなく、どことなくうどんに似た食感に仕上がっている。あらかじめたくさんをゆでてザルに上げておき、それを注文に応じて炒めて火を通す調理法がふつうである。具にはソーセージ、タマネギ、ピーマンなどを使い、味付けは、マーガリン、ケチャップ、塩、コショウ、コンソメスープの素あるいは化学調味料などを使う。これには、粉チーズとタバスコが一緒に食卓に出されることが多く、好みでかけて食べる。
軽食のほか、喫茶店につきものなのはケーキである。喫茶店のケーキは素朴なものが多く、主なものは、ショートケーキ、モンブラン、アップルパイなどである。
モーニングセット
喫茶店はふつう朝早くから開店し、仕事前の人々に朝食を提供する役も担っている。朝食時はモーニングセットと呼ばれる飲み物と軽食を組み合わせたメニューがサービス価格で提供されるのがふつうである。
これは典型的なモーニングセットの一例である。飲みものはコーヒー、紅茶から選び、軽食には、トースト、ゆで卵、小さなサラダがついている。
このほか、サンドイッチやピザトーストなどを選べるようになっている店も多い。一時期、モーニングセット競争というのが起こって、各店がモーニングセットに趣向を凝らし、メニューと安値で客を呼び、一時期はメニューのバラエティが恐ろしいことになっていた、というのを聞いたことがあるが、あれは名古屋方面の話である。
チェーン店系コーヒー店
冒頭で述べたように、現在では、昔ながらの喫茶店はこのチェーン店系コーヒー店に駆逐された形になっている。逆にわれわれ東京庶民はこれらのコーヒー店がすでに日常生活の一部になっている。そこで簡単に紹介しておこう。
現在、東京でよく見かける店舗は、ドトール、スターバックス、エクセルシオールカフェ、タリーズ、ベローチェ、サンマルクカフェなどである。それぞれ特徴を出しているが、基本的にコーヒーを安値で提供することが多い。昔の喫茶店のコーヒー一杯の値段は比較的高く、400円前後がふつうであったが、そこにこれらチェーン店は一杯200円以下のコーヒーを提供し、大半の客をひきつけていったという経緯であろう。コーヒーを安値で提供することで、ちょっとした暇つぶし、ちょっとした休憩にこれらの店を手軽に頻繁に使えるようになった。そういう意味で、庶民のライフスタイルを変えることに成功したともいえるし、昨今のせわしい東京ライフをさらにせわしくしたとも言える。ただし、スターバックスなどのように、スローライフ系のコンセプトで、コーヒーの質を良くし、値段を他より高くし、店内サービスもくつろぎを重視している店もある。
メニューは特段紹介するほどのものはないので割愛する。本大衆食サイトは基本、チェーン店系は積極的には取り上げないので、他を参照していただきたい。
(*) 画像はGoogleサーチで持ってきた無断転載である。写真撮影次第差し替え予定。