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霍乱の女

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縁台にいる女が、尻からはゲリ便を噴出し、口からはゲロを吐き、止まらない状態になっている。詞書には

「霍乱(かくらん)、という病気がある。急に腹が刺すように痛み、口から水を吐き、尻から下痢を漏らし、苦しみに悶絶し、まことに耐え難い」

とある。白い衣を着た婆さんは、しなびたおっぱいを丸出しにして女に処置をしている。経験からこれが霍乱だと十分に分かっているのであろう。冷静に女の頭を押さえ、口から吐かせ、ケツをまくり上げて、縁台から外に向かってゲリ便を思う存分放出させている。

家の中の若い女は両足で石の器を固定して、なにかをすりつぶしているが、これはおそらく薬を作っているのであろう。できた水薬を、緑色の着物を着た女が、縁側に立ち、病人のところへ持って行く。

この縁台に立つ緑の女のなんとも絶妙な、遠近法を無視した不安定な、浮遊したような感じがまことにいい味を出している。

そして、右はじには、庭の犬が、地面で盛大にはじけ散るゲリ便に、嬉しそうに寄って来て、臭いをかいでいる。それとシンメトリーの位置の、左はじに、なんにも分かってない赤ん坊が畳を這っている。

全体にすばらしい構成美である。特に、右から半身フレームインする犬と、左から半身フレームインする赤ん坊が両方ともなんとなくアホっぽくて、とてもいい味を出している。これはオリジナルの方がずっとうまく描けている。すばらしい絵である。

ところで霍乱は、いわゆる暑気あたりや、暑い日に冷たいものを食べ過ぎるなどして急に起こる、嘔吐と下痢と腹痛を引き起こす急性胃腸炎のことを指すそうである。そうしてみると、なんとなく全体に昔の夏の風物詩のひとコマのようにも見える。