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口臭の女
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宮仕えの女3人がいる。右が問題の口臭がひどい女で、歯を磨いている。左の2人が臭い臭い、ってやっている。詞書には
「都に女がいた。容貌は美しく、髪はきれいで、宮中に勤めていた。噂を聞いて、外から男が来て、ものにしようと近づくのだが、口があまりに臭くて、近寄っただけで、あまりの臭さに鼻をつまんで逃げてしまう。単に家にいるだけで、そばにいる人は臭くて耐え難いほどであった」
と、だいぶ重症の口臭を持った女のようである。
じつにあでやかな着物を着て美しいが、本人、だいぶ気にしていて、歯ブラシで歯を磨いている。床に水を入れた椀が置いてある。
ちなみに、このころの歯ブラシは、房楊枝といって、繊維質の木の棒の片側を噛みほぐして房にして、それで歯をこするのである。
左下に描かれた女は袖で鼻をおおっているが、これは他の絵でもよく出て来る、「あー臭い臭い」ジェスチャーである。模写版では無表情だが、オリジナルでは笑っていて、明らかに本人をバカにしている。
左上の女は左手で口臭の女をさしているが、よく見ると歯ブラシの方をゆびさしている。なので
「あんたねえ、そんなのでいくら磨いても無駄。いくらやっても変わんないわよ」
みたいに、けっこう意地悪なのではあるまいか。
800年前は便所事情なども悪くそこらじゅうがひどく臭かったなどと言われてはいるが、やはり上流階級の場では、口臭だとかそういう臭いには敏感だったのであろう。
例によってオリジナルの方がはるかに表情がよい。