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ふたなりの男

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丸出し露骨な表現で、うわっとなるが、江戸時代の春画も世界的に有名なように、800年前の日本もやはり同じなのである。

詞書には

「ちょっと前、都を、鼓を首にかけて歌い歩く男があった。容姿は男なのだけれど、どうも女の姿にも似たようなところがあったので、人はみな不思議に思っていた。そこで、誰かが、その男が夜に寝入ったところを見計らって、そっと着物をかき上げてみたら、男根の女陰の両方があるではないか。これはふたなりというものである」

とある。

この男は、鼓と笛で町を流す楽士なのであるが、肌もツルツルして、顔などほんのり紅がさしており、どうにも女っぽい。それで、寝入ったところを確かめに行ったというわけだ。

模写版では分からないが、オリジナルの方は顔に紅が入り、なかなかいい感じである。

着物をまくり上げている若い男はやけに嬉しそうで、「ホラ、これ、見てみろよ」みたいに言っているが、帳から顔を出している男の表情がなかなか秀逸で、「えー? いいよー、オレ、見たくねえよ、そんなの」みたいな顔しているくせに、やはり興味本位で見たいのであろう。

男性と女性の性器を具有したこのふたなり(二形)は、いわゆる両性具有だが、古くからあるモチーフである。ちょっと日本のWebで調べてみると、このふたなりが、さまざまなバリエーションでエロ対象化されており、さすがHentaiの国、日本である。

ふたなりはそれほど罪はないが、この当時はいわゆる「畸形」はふつうに差別対象で、笑ったり、バカにしたり、はやし立てたり、という表現がときどき出て来る。病草紙にもいくつかそういうのがある。

ところで、この当時の家の部屋の様子もおもしろく、家具などほとんどなく、まことにすっきりと簡素である。