このサイトが本になりました

歯槽膿漏の男

クリックでオリジナル

これは別名「歯がゆらぐ男」で、要は重症の歯槽膿漏なのである。このおっちゃん、口がさぞかし臭かったであろう。左はカミさんだろう。詞書には

「男あり。以前から口の中の歯がぜんぶゆるゆるで少しも硬いものなどは噛むことができない。だいたいがなまじ歯が抜けなかったりすると、物を食うときえらく痛んで耐えがたい」

と書いてある。「この、ここの、奥の歯がぐらぐらでよお、痛くて食えねえんだよ」と言っているのであろう。

お膳がなかなか面白い。ごはんが山に盛られて、箸が突き刺さってる。左に汁もの。手前はおかず3品。いちばん左は、これは魚だろう。あとの二つは分からないけど、なんかの菜か漬物であろう。向こうの小皿には醤油とかが入っているようだ。このころはどうやら調理で味をあまり付けず、煮たり焼いたりした食材を、塩や酢、味噌醤油や酒に付けて食っていたそうなので、おそらく、それだろう。

ぜんぜん分からないが、なかなかうまそうではある。添加物完全フリーの超自然栽培の有機もので、現代ではえらく贅沢な代物だ。

でも、この男は痛くて食えない。飯の上んとこをちょっと食っただけで、耐えがたく歯が痛い。だいたい良く見ると、上の前歯のあたりは歯が抜けちゃってないし、下の歯は乱ぐい歯だし、さんざんである。

右手で腹を押さえているけれど、指にだいぶ力が入っているので、これは、歯周病のなにかしら合併症で胃腸とかもやられていそうである。

左のカミさんはまだ若々しいので20代であろう。で、この旦那の方は推定で、40歳前ぐらいであろうか。たぶん、こんな風に身体壊して、みんな40歳ぐらいには死んじゃっていたのであろうか。