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そんなわけで彼は非常に有名なせいもあり、さらに、この僕自身がロバート・ジョンソンがもっとも好きな戦前ブルースマンであるということ、しかも自分でも彼の曲をもう30年以上弾き語りで弾いて歌ってきたということもあり、語り出したらめちゃくちゃ長くなってしまい、彼だけで他の講座が必要になっちゃいます。

というわけで、ここではさらりと行きます。

とにかくもっとも有名な戦前ブルースマンです。レコーディングしたのは彼が25歳のときで、2年間で29曲を吹き込み、最後の録音の翌年に、女がらみのごたごたで毒殺され、27歳の若さで死んでしまいます。のち、この29曲は、「King of the Delta Blues Singers Vol 1&2」という2枚のLPで発売され、クラプトンやキースはこれを聞いて育ったのです(僕もです)。

ロバートの音楽はいろいろな影響を及ぼしますが、特にMuddy Watersがこの雰囲気をよく引き継ぎ、これをシカゴへ持ち込み、エレクトリックの力を得て50年代にシカゴバンドブルース全盛時代を作り出します。このシカゴブルースを受けて60年代にクラプトン、ストーンズ、キンクスといったバンドが生まれ後のロックへ発展します。

そういう意味で、ロバートの音楽はただたまたま売れたというだけでなく、現代のポピュラー音楽、特にロックにつながる歴史的に重要な位置にいるのは確かです。

あと、ロバート・ジョンソンのブルースはけっこう偏執狂的な独特な暗さが付きまとっていて、その雰囲気が後のブルースロックに受け継がれているので、どうも僕には、いわゆる「暗いブルース」の元祖ではないか、という気がしています。考えてみると、これまでたくさん戦前ブルースマンの演奏を音源で載せましたが、いわゆる「暗い」という感じの音はひとつも無かったですよね?

加えて、25歳という若さですさまじい才能を発揮し、2,3年活躍し、30歳になる前に死ぬ、という伝説的ロックスターの原型になる人とも言えそうです。60年代のジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョップリン、ジム・モリソンの元祖とも言えるような気がします。

さて、それでは聞いてみましょう。ここでは2曲用意しましたが、2曲ともあまり暗くないのを選んでます(笑)。まず、スィート・ホーム・シカゴですが、この曲はのちのちブルースの定番中の定番になりました。いまでもブルースセッションなどでは必ず1回はやられる曲ですよね。



ここでロバートが全編に渡って弾いているギターのシャッフルパターンが重要です。このパターンは元々はピアニストの左手のベースラインをギターに移し変えたものですが、このパターンを一曲に渡って全面的に入れるのが彼の特徴でもあり、新しいところとも言えます。このデッデデッデというパターンも、ブルースの基本中の基本のバッキングパターンとして現代でも普通に行われている超有名パターンです。

ロバートの歌も独特です。わりと甲高い声で、音程の取り方が非常に微妙で、なんとなくねじれ捩れている感じのボーカルラインが特徴です。

はい、それでは、この最後のテラプレーン・ブルースを聞いて、この講座を終わりにしましょう。この曲のシングルヒットによってロバートはブルースマンとして有名になったそうです。オープンGに2カポしてスライドギターでプレイしていますが、歌もギターもすばらしい完成度とテンションで演奏しています。



やはり、さすがです、すばらしいです、美しいです。