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水を求める餓鬼

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茨の生えた荒れ地のようなところに餓鬼がいて、左端にある池の水を飲もうとしている。色が褪せていて分かりにくいので、摸本の方で見ると分かるのだが、この餓鬼が目を輝かして見ているのは、水色に塗られた水たまり、あるいは池なのである。さらに同じく傷んで分かりにくいが、右端にも茨の中を這って水へ向かっている餓鬼がいる。この絵は巻物のいちばん最後のもので、ひょっとすると左が欠損しているのかもしれない。大きな池が広がって、そこにおおぜいの餓鬼が群がっているのかもしれない。

ただし、もちろん、喉の渇いた餓鬼たちは水を見つけて大喜びするが、経典によれば、こういうきれいな水は飲めないのである。飲もうとすると鬼が出て来て棍棒で殴られたり、いくら飲もうとしても水が火に変わってしまって飲めなかったり、いろいろだが、彼らはずっと渇いたまま、苦しむのである。