オレがフロイトを学んでショックだったことは、人間の心には我々がまったくコントロールできない理不尽で強大なエネルギーのかたまりの「エス」というものがある、ということを教えられたときだった。
そして、少し救われたと思ったのは、あなたが怖がっているそのエスはそんなに恐ろしいだけのものじゃないんですよ、たしかにコントロールはできないけれど死んでしまった過去の親しい偉人たちもそこにいるんです、とユングに教えられたときだった。
たとえばゴッホの画布の上にはこのエスが目に見えている。それはフロイトが言うように恐ろしいし、ユングが言うように親しい。その、両方だ。