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これまでブルース以前の黒人音楽のいくつかと、その土壌の中で生まれたブルースという新しい音楽の紹介をしました。

つまり、ワークソング(コール・アンド・レスポンス)、フィールドハラー(ブルースっぽいメロディ)、バラード(12小節を繰り返して語る)、初期のジャズ(集団で踊る)というものからブルースという形式が生まれてきたのです。

これを意味的に考えると、スライドの左に書いたブルース以前の音楽には、仕事と集団ということが見て取れると思います。仕事しながら歌う、あるいは皆で集まって騒ぎながら演奏、踊りながら、そして神に祈りながら、ってわけです。

それに対してブルースという新しい音楽は、それらとわりと反対の方向を向いていて、仕事してないで暇してるとき、個人的な事がらについて独白的にしゃべって歌う、というイメージが強い音楽なのが分かると思います。

この集団から個人へ、という動きは、やはり奴隷制が終わって自由になって動き回れるようになった個人、という社会的な事情と平行しているように見えます。面白いですね。

音楽的に言うと、ちょうどこの事情に対応するものにコーダルとモーダルというのがあります。この言葉は主にジャズの世界でよく使いますが、めちゃめちゃ乱暴に言うと、コード進行に沿って展開する音楽がコーダル、ルート音だけ決めてメロディのおもむくままに展開する音楽がモーダルです。

このコーダルとモーダルの対照も、ジャズや音楽の歴史に繰り返し現れるのですが、ブルース以前の音楽からブルースが生まれた移り変わりも、コーダルからモーダルへ、という移行に平行して見えます。これまた面白いですね。

まあ、以上は僕の考え、ということもあり、参考ていどに思ってくださいね。