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それでは、ここらでまとめましょう。

上のスライドには、これまで紹介したブルース以前の黒人音楽のワークソング、フィールドハラー、バラード、初期のジャズといった音楽でその後に現れるブルースに引き継がれていった要素のようなものを対照させて書いてみました。

こういったそれまでの黒人音楽の要素が土壌としてある中で、1865年に奴隷制が終わり、土地に縛られていた黒人奴隷が解放され、いっそう厳しくなった差別社会の中で最下層の労働者として自由になった、そんな黒人たちの生活の中から、新しい音楽が生まれます。それが「ブルース」なのです。

では、ブルースというのはどんな音楽だったのでしょう。

まず、ブルースマンたちは個人的な経験を歌いはじめたんですね。伝説とか物語とかより、超個人的なことを勝手に歌い始めたわけです。なので、その音楽は独り言みたいにしゃべることが基本で、特にギターという楽器はそういう「声」にぴったり合った楽器だったようです。

ギターは軽いので、どこへも持ち歩けるし、管楽器と違って弾きながら歌えるし、調弦を変えて彼らの好みの不協和音的な響きも簡単に出せるし、弦をチョーキングしたりスライドバーを使ったりしてしゃべるような効果も出せた、というふうに、彼らのニーズにぴったりだったんです。

ブルースは歌とギターの音楽として生まれたと言っていいと思います。

それから、これは面白いなと思うんですが、ブルースというのは黒人音楽の中で意外と遅れて出てきた音楽だった、ということです。当時で言えば、すごくモダンな音楽だったんですね。

奴隷制が無くなってから30年ほどの間にブルースが生まれた、というのは決して偶然ではなく、奴隷制から解放されて自由になった社会最下層の黒人たちの、生活の苦しみと、また喜びと、そんなものの混合から生まれたのだと思います。