前へ<     >次へ



さて、それでは次は、ブルース以前の黒人音楽、エンターテイメントの方なんですが、まずは「バラード」です。

今ではバラードというと、スローテンポでメロディアスな曲のことを言いますが、ここでいうバラードは「歌謡」ってな意味です。バラード(Ballad)の起源はずいぶん古いヨーロッパにあるようです。それで、アメリカ人は元はヨーロッパから渡ってきているので、当然、ヨーロッパの歌謡もそのままアメリカに入り定着しましたが、その歌謡を今度は黒人が歌ったわけです。

黒人の歌いまわしやメロディーの取り方は独特なので、バラードも独自の感じになっています。伝承物語のような感じの歌詞がついていて、だいたいが8小節とか12小節とかの単位で繰り返され物語が進行して行く、という形式だったようです。

ではそのバラードの例を聞いてみましょう。



これは、写真に写っているLead Bellyの「John Henry」というバラードで、ジョン・ヘンリーという伝説的人物に関する物語です。ジョン・ヘンリーは「ハンマー打ち」の労働者で、ある日、そのころ導入された蒸気機関ハンマーと壮絶な勝負をして、最後には蒸気機関に勝つんだけどその場で死んでしまう、という物語を歌にしています。

レッドベリーはほとんどダンス音楽っぽく演奏してますね。

ところで、こうした民衆に人気のあるバラードを歌って流すミュージシャンをソングスター(Songster)って呼んでました。レッドベリーは当時のソングスターの生き残りの一人で、12弦ギターを弾いて歌いますが、あらゆる種類のバラードそしてブルースを歌う凄腕の歌手だったそうです。

このバラードの、ひとまとまりの12小節なら12小節の歌を、何回も繰り返し歌って物語を語ってゆく、という手法がのちのブルースにも伝わっているのだと思います。