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では、ブルース以前の黒人音楽、まずは民族音楽系の「ワークソング」です。

ワークソングはその名のとおり、おおぜいで仕事をするときに掛け声をかける中で生まれた音楽です。土地を掘り返したりとか、船をこいだりとか、鉄道の工事だとか、綿花の巨大な束を転がして運んだりとか、おおぜいがいっせいにリズミカルに作業する場で歌われた歌です。

この写真は1800年代のものではなく、戦前の刑務所の労役の写真のようです。

基本は、音頭を取る一人がワンフレーズ歌い、その後、その他のおおぜいが合唱で応え、そのタイミングで、つるはしを振り下ろしたり、なんか引っぱったりする、というわけです。

つまり「リードとコーラスのかけあい」、これを称して「コール・アンド・レスポンス」などと言ったりしますが、後のブルースではこの掛け合いのノリはとても重要です。というか、たとえば、歌をワンフレーズ歌ったあとにギターやピアノで合いの手フレーズを入れて、それを繰り返す、っていう手法は、今のポピュラーでも定番ですよね。では、聞いてみてください。



うーむ、ほとんど「与作」ですが、でもしばらく聞いていると、黒人音楽に聞こえてきますよね。ちなみにこの録音は、1800年代のものではなく、たしか1940年代に、アメリカの民族音楽に関する文化的研究をするためにかなり大々的なフィールドレコーディングが行われたのですが、そこから持ってきた音源です。実際には刑務所へ行って、そこの囚人たちに「ちょっとみんなでワークソングやってみてくれ、録音するから」って感じで録ったもののようです。