はじめに

思えば読書感想文なるもの、むかし学校でずいぶんと書かされた。小学生のころから理科が好きだった自分は、読書感想文の課題が出るたびに、めんどくさいなあ、と思ったものである。理科の世界にいるとき、目の前に現れるものは毎回違っている。火や水や、石や土や生物や、自分の身の回りのあらゆるものが入れ替わり立ち替り対象になって、飽きることがない。それに対して、読書を通してものを知る作業はけっこう孤独である。どんな内容のものであっても、僕らが直接に接するのはいつでも印刷された文字だけである。今思うと、そのワンクッションがめんどうくさかったのだろうなあ。しかし、大人になってあまりにも人間付き合いが膨れ上がってくると、広がりすぎた現実生活にはなはだしく疲れ果てることがある。そんなときに、この孤独な読書というもの、とても気持ちを安らかにしてくれることを最近発見した。ちなみに、大学時代は本を貪るように読んだものだが、あまりに追求しすぎ、もうこれ以上読む必要はない、と勝手に自分で判断し、本はそれ以来、ほとんど読んでいないのである。ということで、ここでは、主に慰めとして始めた読書について、短い感想文を書いてみることにしようと思う。