ヴァンスの演説

これはアメリカの副大統領のヴァンスがヨーロッパでやった演説だけど、前々から話題になってるのを、日本語字幕付きで見た。

しかし、これはショッキングだ。並みいるヨーロッパの面々を前にして、アメリカ人の彼が滔々と説教している。これはもう、完全に、説教であって、もし、これが宗教リーダーかなんかならまあ、分かるけど、この人、アメリカを代表する政治家だからね。

よく、これだけあからさまな説教ができるもんだ、さすがに感心した。

ヨーロッパの重鎮たちはおそらくただただ唖然としただろう。そしてヨーロッパのインテレクチャルたちもただただ唖然としただろう。演説終了後の拍手はあるが、途中、どんどん拍手が減って行き、ほぼ最後の方でとっておきのユーモアを披露したが、ぜんぜんユーモアになっておらず、聴衆に完全に無視され、むしろ聞いてる部外者のオレの方が笑っちまった。

正直に自分の感想を言うと、これは痛快だった。ヨーロッパはかつて150年以上前、ボードレールがこき下ろしたように、アメリカを文化的に完全に下に見ていた。ボードレールなんか、アメリカを味噌糞に言いもしなかった。一言二言で殺人的無視するだけで、それほど下に見ていた。時代は次に移り、サルバドール・ダリになると、アメリカを見下してはいるが、大いなる可能性も見出していてそのへんが均衡する。そして、21世紀になり、おそらくアメリカはヨーロッパを正式に追い越したみたいに自分には感じられる。

これはね、やはり「慢心」だと思うよ。ヨーロッパは油断しすぎだと思う。

ちょうど、慢心して油断しきった日本が中国に産業的にあっさりと抜かれてしまったように、慢心したヨーロッパは文化的にアメリカにあっさり抜かれた、という風景に、自分にはどうしても見える。

ヨーロッパはこれで反省するだろうか、と思うと、ぜったいに反省しないと思う。おそらく、トランプとヴァンスを生んだアメリカを、内心、劣等中の劣等とみなすことを止めないと思う。アメリカという国は、その劣等国民が半数いる哀れな国だとみなすと思う。

でも、そう遠吠えしている状態では、ヨーロッパはそのまんまだろう。

あと、ひとつ言えるのは、慢心するほどに成熟した国のシステムは、まず頑丈で変わらないものだけど、たくさんの弊害を生み出す代わりに、強固な安定を保証してもいる、という点。腐敗したシステム、というのは意外とロバストで、恩恵も多く与え続けられる、ということだ。

アメリカは、その強固なシステムを、トランプを筆頭にむちゃくちゃに破壊しているが、さて、それがどうなるか、まあ、神のみぞ知る、だね。

とにかく、この演説は、おそらく歴史に残るだろうな。驚いた。

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