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旧益田家本甲巻

本図は七つの地獄を収めているが、ひとつひとつ切り離され、散逸している。画像データについても国立博物館が一元管理していないので、現在はきちんとした画像は無く、ここでは仮りにインターネットから拾ってきた画像を載せておく。これらは著作権処理されていないし、品質もまちまちである。のちによいものが入手されれば差し替える。

ここで提示されている地獄は、生前に仏の道を外れた僧侶が堕ちるところで「沙門地獄草紙」とも言われる。詞書も入手できないものがあり、さらに詞書があっても解読が済んでいないので、解説にはネット上で調べた分かる限りのことを書いておく。



一 火象(五島美術館蔵)

ここは陰欲にふけった僧侶が堕ちる地獄である。炎を発する象が暴れまわり、僧侶を噛み砕き、踏み潰している。自在に動く象の鼻が陰茎を連想さすのであろうか。

二 咩声(シアトル美術館蔵)

ここは、生き物を打ったり、虐待したりした僧侶が堕ちる地獄である。牛頭馬頭と呼ばれる、馬の頭、そして牛の頭をした獄卒の鬼が僧侶を炎の中に追い立ている。

三 飛火(個人蔵)

地獄の漆黒の空間の下、なにもない荒野で僧侶たちが至る所におこる炎に苦しめられている。

四 剥肉(個人蔵)

ここは、動物を殺して皮を剥いだりした僧侶が堕ちる地獄らしい。当時の僧侶に、そういうことをして皮を利用したり売ったりする輩がいたのであろうか。鬼たちが肉ごと背中の皮を剥ぎ、僧侶たちは血まみれで肋骨を露出させてうつ伏せに倒れている。なかなか凄惨な描写である。

五 沸尿(奈良国立博物館蔵)

牛頭馬頭の鬼に指図され、おおぜいの僧侶たちが熱く沸騰した糞尿の河に次々と落とされている。戒律を守らず、酒を好んで飲んだり生き物の肉を好んで食べたりした僧侶が落ちる。

六 解身(MIHO MUSEUM蔵)

ここは、生き物を殺して関節を切り刻んだ僧侶が堕ちる地獄だそうだ。見ての通り、鬼たちが俎板に僧侶を乗せ、手足を切り、関節を外し、砂粒ぐらいになるまでひたすら切り刻む。そして、俎板を叩いて「活々」と言うと、これら肉片骨片がたちまち生き返り、また再び切り刻まれるのである。

七 鉄山(所蔵元不明)

情報が少なく分からないが、これが鉄山地獄らしい。画像がよく見えないが、炎に包まれた黒い鉄でできた山らしきところに僧侶がいて、大きな鬼が鉄箸でこれをつまみ、ばりばりと喰ってしまう、焼肉的な感じに見える。