毎年夏になると 領国広小路、下谷弘前 浅草ほか神田などへ夜に入ると 麦湯と称する涼み小屋が並んで 麦湯、葛湯、桜湯、玉子湯などなどと 書かれた行燈をかかげて 一二の美人が愛嬌をふりまき 魔力をもって客に接するなど 今でいう銘酒店のようで 淫風の盛んなこと 驚くほどだったという。
この鵜使いは、源兵衛爺さんの専売である。 桐の木で鵜の形を作り 火にかざして黒くする、俗にいう焼桐として これにすが糸を結わえ付け、その末端をどじょう、 またはその他の小魚の背びれに結び合わせて 水中に放つと、桐でできた鵜が 浮いたり沈んだりするさま、さながら 生きて働いているようである。
下谷広徳寺の前に店舗を出していて 水晶の眼鏡でもって太陽の光線より 火を取って、板の切れ端に文字などを写す。 また、この眼鏡を見る客があれば その説明をする。 「右に見えるは金曜星、左に見えるは 木曜星、お天道様は星の行く道を巡る云々」