世渡風俗図会

清水晴風

はじめに

お役替えお役人付

「お役替えがありました 
ご役人付で事細かにわかる
御高、御知行、御国から
お屋敷の町名番地まで残らずわかる」

麦湯

毎年夏になると
領国広小路、下谷弘前
浅草ほか神田などへ夜に入ると
麦湯と称する涼み小屋が並んで
麦湯、葛湯、桜湯、玉子湯などなどと
書かれた行燈をかかげて
一二の美人が愛嬌をふりまき
魔力をもって客に接するなど
今でいう銘酒店のようで
淫風の盛んなこと
驚くほどだったという。

幽霊の乞食

この乞食は、片足が不自由で杖を使って歩く。
常に幽霊に扮して銭を乞う。
あるときは小幡小平次に、また、お菊の幽霊
などが得意である。

厄払い

大晦日の夜、または節分の夜に
「お厄払いしましょう厄落とし
お年越えのご祝儀に、お厄払いしましょう厄落とし」
と大声で呼んで、町中を歩く者である。

きのこ売り

秋のころ、松茸や初茸のたぐいを
背負って、町中を
「初茸 初茸」
と呼びかけながら売り歩く。

鵜使い

この鵜使いは、源兵衛爺さんの専売である。
桐の木で鵜の形を作り
火にかざして黒くする、俗にいう焼桐として
これにすが糸を結わえ付け、その末端をどじょう、
またはその他の小魚の背びれに結び合わせて
水中に放つと、桐でできた鵜が
浮いたり沈んだりするさま、さながら
生きて働いているようである。

おうさの婆あ

安政の末ごろ、老婆が一匹の白うさぎを
米あげざるに入れて
「おうさが参りました」
と言ってやって来る、乞食である。

星見の眼鏡

下谷広徳寺の前に店舗を出していて
水晶の眼鏡でもって太陽の光線より
火を取って、板の切れ端に文字などを写す。
また、この眼鏡を見る客があれば
その説明をする。
「右に見えるは金曜星、左に見えるは
木曜星、お天道様は星の行く道を巡る云々」

ちょぼくれ願人坊主

大道芸人の一種で、祈願祈祷などして金をもらう。

細見売り

「新吉原のご案内 仮宅のご案内」