世渡風俗図会

清水晴風

はじめに

金太郎飴売り

「飴の中からお多福さんがちょっと出たよ
にこにこ笑って飛んで出たよ、お多福さん。
いやなら金太郎さんが飛んで出る」

五百羅漢再建寄付募集の托鉢

「本所五つ目五百羅漢えーーーー」
再建の仏の杖の音がガラガラガラガラ 
天恩山の羅漢禅寺は松雲禅師が創立し、
阿羅漢の像五百体を安置している寺で
さざえ堂として有名なこの寺の僧侶は
常に托鉢を修行としている。
これ、仏法のお布施の波羅蜜に違いない。

本所回向院佛施

本所回向院は東京の両国にある浄土宗の寺院である。

五月の節句鯉の手遊び売り

「手遊び」とは、江戸時代では、おもちゃ、玩具の意味で使われた言葉である。
「おもちゃ」は「お持遊び」の訛ったものでやはり江戸時代から使われている。

精霊会の供物売り

毎年7月12日に魂棚に供する者を売る者があったけれど
今は、絶えてこれを売る者を見なくなった。

豆腐売り

「豆腐うい 生揚げ がんもどき」

芝居顔見せ番付売り

「江戸三座の役者の給金の番付けが入れ替わりました 役者顔見せ番付け」
役者給金といって半紙の二枚刷りに、似顔絵ならびに改所位付け俳名住居などを詳しく
書いて、また、一口批評を、江戸名所そのほか橋尽くし川尽くし鳥魚など
いろいろな物の絵をともに載せるものである。
この番付は毎年十一月、顔見せのときに改版する
ものといわれる。

薪割り

この薪割りは、松でも硬い雑木でも区別なく、
重さ一両につき何銭という規定があって
誰でも頼むと来て薪を割ってくれる。
また、この薪割りには区別があって、薪商いの下請け
だけをする者と、いつものひいきの客を通してする者と
街中を「薪割り」と呼んで歩く者との、三種ある。

しょこりしょこりの俵売り

「お子さん方のお座敷でのおもちゃ遊び
しょこりしょこりの俵が四文
扇箱でも、箸箱でも、お盆の上や御膳の上で
しょこりしょこりの俵が四文」

回りの髪結い

回りの髪結いは、商家の多い町内には
必ずいて、終日、各店を回り
旦那、番頭、若者、小僧あるいは権助など
に至るまで、髪を結って回るのを商売とする。
付言
安請け合いをするのを「髪結いのただいま」という言葉が
残ったのは、この髪結いを迎えに行くと、どんな用事があろうが
「ヘイ、ただいま」と答えることで、そう言うならわしになった
そうだ。