前後不覚の睡眠を彼は休息とは呼ばなかった、それは単なる眠りに過ぎない。労働と分かち難く結び付いているものであり、眠りのない労働は不可能であると同時に、労働のない眠りもありえないのだ。労働に休息を対置させ、眠りを恐れる現代人とは縁のない話だ。彼は知的な休息を案出する。それが音楽であった、それも色彩の音楽であった。全精神を傾けた労働から、疲れ果てた神経を救い出し、デッサンの単純明快な旋律と色彩の素朴な和声の奏でる音楽に、聞き入る休息を彼は想うのだ。

 


ノート

ゴッホのアルルの寝室 1889年 サンレミ パリ・オルセ美術館

ここにあげたのは、アルルで描かれたオリジナルの本人による二点の写しのひとつである。部屋右上の二点の肖像画や、若干のデッサンの修正があるが、三点ともほぼ同じである。