ゴーギャンが到着するまでに、四点の日向葵が仕上がった。ひとつめは、緑の花瓶に三本の大きな花が入ったもの、ふたつめは、ロイヤルブルーの背景に種を持ったのと花弁が落ちたのとつぼみのと、四つの花があるもの、三つめは、薄緑色の背景に十二本の花とつぼみがあるもの、四つめは、黄色の背景の中の黄色の花瓶に十四本の花とつぼみがあるもの。描くにつれ花の本数が多くなって行く。一つめは未だ奥ゆかしく目覚めたばかり、二つめは礼拝堂の暗がりの中の光輝を抱いた信者のごとく、三つめは身震いして今しも爆発せんばかり、そして四つめで四肢は見事に広がり、重たそうな大きな花が、ありそうもないような格好で重力のバランスを取って、まるで、中世の宗教的飾り絵の中の、幾つもの実を付けた樹木のような、素朴な効果を上げている。色彩は独創的だ。彼はこんな風に言っている  全体が青と黄のシンフォニーになるだろう  耳を傾けてみよう、主題(テーマ)が聞こえて来る。

 


ノート

向日葵 1888年 アルル ロンドン・ナショナルギャラリー

十四本の向日葵を描いたものではこれがオリジナルで、その後ゴッホはこの向日葵の写しを二点描いており、十四本の向日葵は計三点になる。ちなみに、そのうちのひとつが日本の安田海上火災にある。文中で触れている本数の異なる向日葵の連作を以下に載せておく