増幅各段の分離
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デカップリング回路
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アンプの回路図を見ると、右の図のように電圧増幅段へ一種のCRフィルタを通して供給しているのが分かる。これは、電源回路の平滑回路と同じ形なのでリップル除去用のフィルタとして働くが、もう一つ大切な役目がある。それは、増幅回路の各段を分離するということで、これを
デカップリングと呼ぶ。
ここで下の左の図のように、Rを入れずに、Cだけで2段分の電源を供給してみよう。そうすると、2段目のプレートに流れる信号電流はCを通ってグランドへ抜けるが、そのときCの両端に信号電圧を発生させる。よくみるとこのCの両端の信号電圧はそのまま1段目の出力に加わっていることが分かる。つまり、出力が入力に戻ってしまう現象が発生するのである。出力が入力に戻ってしまうと発振の恐れもあるし、動作が不安定になる。このCが巨大でインピーダンスがほとんどゼロとみなせれば大丈夫な道理なのだが、インピーダンスは低域ほど高くなり、無視できなくなる。結局、低域で発振などの困った現象が起こることになる。
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デカップリング回路がない場合
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デカップリングの原理 |
そこで、上の右の図のようにRを間に入れて各段を分離するのがデカップリングである。こうすると、C1の両端で発生した信号電圧はRとCによって分圧されるので、前段への信号の入り込みは影響がないほど小さくなるわけだ。このデカップリングのRとCの値の決定にこれという方法はないのだが、一般にCをできるだけ大きく取ると、デカップリング的にも、リップルフィルタ的にも効果が大きい。Rを大きくしても同じ効果が得られるが、電源のインピーダンスが大きくなって
レギュレーションが悪くなってしまうので、Rはせいぜい1kΩから10kΩていどにして、Cを大きくして対応するのが普通である。Cは10μFから100μFぐらいがよく使われる。
チャンネル間の分離
それから、これはギターアンプには関係ないが、ステレオアンプの場合、このデカップリングは、Lch(左チャンネル)とRch(右チャンネル)の信号を分離するのにも使われる。下の左の図のように、LchとRchの電源を同じところから取ると、Lchの信号電流によりCの両端に発生した信号電圧がRchに入り込み、逆も同じくなので、LchとRchの信号が混ざってしまう。この現象をクロストークと呼んでいて、Cのインピーダンスが上昇する低域ほどクロストークが悪化することになる。
これを避けるには、Cを巨大にしてインピーダンスを十分下げるのも一つの方法だが、下の右の図のようにLchとRchの間にもデカップリング回路を設けるのがふつうである。こうすることで、低域のクロストークはずいぶんと改善される。
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LchとRchを共通電源にすることによるクロストーク悪化
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デカップリングによるLchとRchの分離 |