以前自作した5W真空管ギターアンプにスプリングリバーブ回路をつけてみた
以前作った練習用の5Wのギターアンプであるが、あまり電源を入れることなく部屋の片隅に放ったままになっていた。たった5Wといえども木造の我が家では、ボリュームを相当落とさなければ弾けない。エレキギターというもの、音量を極端に落とすと非常に貧弱な音になり、それならアンプを通さず生で弾いた方がまだマシ、ということになってしまうのである。ときどきアンプを通すときも、小型のマルチエフェクターでリバーブをかけて小音量で弾いていた。リバーブがかかると、小さい音でも、まあ、気分的に心地よく弾くことができる。とはいえ、そのためだけにエフェクターを持ってくるのもじゃまくさい。あと、これは変な話なのだが、デジタルエフェクターでかけたリバーブというもの、それっぽい音は当然するのだが、何となく弾いているうちに飽きてしまうのである。映像でいうと、メガネをかけて見る立体3D映画ってのがあるが、たしかに立体だけど世界全体が箱庭的に小さく見える、あの感じを連想する。なんか、このちっちゃい箱のなかで人工的にリバーブ効果を作ってると思うと、どうも気分が出ないのである。やっぱりリバーブは、アナログのスプリングリバーブだよな、ということで、5Wアンプにリバーブをつけることにした。
スプリングリバーブっていうのは写真を見ると分かるように、微妙にピッチの異なるスプリングが2本張ってあって、片方の端でこれを励振し、もう片方の端に伝わってきた残響成分をピックアップで拾って、これを原音とミックスしてリバーブ効果を得る、という代物である。まあ、さいきんのデジタルは出来がいいので、ほとんどアナログと同じ音がするのだが、デジタルに出来ないことがひとつある。それは、アンプを蹴っ飛ばすと、スプリングがコイルに激突し、ビッチャーーン! という凄い音がする、アレである。その昔、ディープパープルのライブでアンプをわざと蹴っ飛ばして爆音を作ってたっけな。これをデジタルで再現するのは、やれば出来るだろうが、バカバカしくて誰もやらないだろう。アナログならではである。
さっそくオークションをあさると、運良く、マーシャルのギターアンプについてたというリバーブユニットが出ていたので、二千円で落とした。フェンダータイプじゃなくてちょっと残念だが、まあ、いいや。素性が分からないので、例によってブレッドボード上で試作し、カットアンドトライである。最初、12AU7を使って、1段増幅してユニットを励振し、1段増幅で受けてミックスしてみたが、ほとんど利かない。そこで、2段増幅して励振してみたら、すごいすごい、ちゃんとリバーブが利いてるではないか。思ったより簡単にうまくいくものである。リバーブをかけると5Wアンプが生まれ変わったようで、しばらく作業場にエレキを持ち込んで弾き続け、すっかり満足である。
回路的には変哲ないのだが、励振側のアンプにボリュームを付けてリバーブユニットのドライブ量を調整できるようにした。これは単体のリバーブマシンには付いているが、普通のリバーブ付きアンプにはほとんど付いていないマニアックな調整ツマミである。スプリングの振動量をコントロールし、微妙に残響音を変化できる。原音とのミックスは、フェンダー式とした。これは、3、4MΩの高抵抗を信号の通り道に入れ、抵抗の前から信号を取り出して残響回路に送り、得られた残響信号を、こんどは抵抗の後に注入する方法である。なかなか面白い発想である。ただ、信号がけっこう減衰し、また、次段の三極管の入力容量のせいで高域が落ちそうである。フェンダーの回路では、たぶんこのハイ落ちの補償用に、高抵抗とパラに小さなコンデンサーを入れている。結局、リバーブ用に三極管3つ、ミックス用に1つ、計4つを2本の12AU7でまかなうことにした。
さて、5Wアンプの方だが、これを機に、電源電圧を上げ、ダイオード整流を止めて整流管にすることにした。こんなこともあろうかと、以前安値で5Y3を買ってストックしてあるのである。トランスは買い直さないといけないので、取りあえず電源は元のままで、アルミシャーシーに穴開けを追加し、仮回路を組み上げてみた。最初ノイズがひどかったが、あれこれとやっているうちにだんだんいい音に仕上がってきた。しばらくして、ふと、むかしジャンク屋で300円で買った6V6GTがあるのを思い出し、6L6GCと差し替えてみた。弾いてみると、これがけっこうダーティーな音でかなりいい。6L6よりパワーはずっと落ちるが、その分、歪み方がいい感じで、クラプトンのレイラの中のHave you ever loved a womanの音、っていう感じである。そういえば、あの録音はフェンダーのChampを使った演奏だと聞いたことがある。6V6シングルなので、僕のこれとほとんど同じである。それに加えて僕のはリバーブがかかるところが特徴だ。小出力の練習用真空管アンプでリバーブつき、というのは実際ほとんどないので、これはけっこう貴重な代物かもしれない、と自己満足には十分な出来である。
最終的に組み上がったら、木の檻を作ってメタルの網の向こうに真空管が見えるようにして、ヘッドアンプとして持ち運べるようにしよう。で、スピーカジャックにプラグインして、パワー不足はマイクを立ててPAで補うことにすればライブで使うのも夢じゃない。いやー、自作って楽しいねー
リバーブ付き5Wギターアンプのだいたいの回路(試作調整中です)