エミッタ接地一段のみのトランジスタヘッドアンプ

カセットデッキの製作はまだページに載せていないが、のろのろと進めている。今回、レコードのイコライザアンプつきプリアンプを作ったので、これでカセットのヘッド出力をつないで音が出せる目途がついた。しかし、自作した12AX7のイコライザアンプはMM型カートリッジ用で、入力が5mVは必要なのである。カセットのヘッド直出力はMC型相当で、0.5〜1mVである。実際に実験のためつないでみたが、音量がぜんぜん足りない。そこで、カセットヘッド用のヘッドアンプなるものを作ることにした。

増幅率は10から20倍ていどあれば良いであろう。ま、カセット用だったら、凝ったヘッドアンプを作っても仕方ないし、小型に安易に作ってしまおうという気があり、トランジスタ1石で作ることにした。カセットもなめられたものである。それにしても0.5mVだかの信号を増幅する回路というもの、僕のような初心者にはそう簡単ではないのは想像できたが、練習のつもりで自分で設計して作ってみることにした。

ヘッドのインピーダンスはたぶん数kΩで、次段の真空管イコライザアンプの入力インピーダンスは50kΩていど、ということで、ヘッドアンプはただのエミッタ接地のアンプで十分だろうと思い、教科書どおりの回路を書いた。エミッタフォロワーぐらい付けるのが筋なのかもしれないが、最小限で済ませたかったので1石のみで終わりである。ゲインの調整は安易に、エミッタ抵抗の直流帰還を利用して10倍ていどになるようにした。部品を揃える前に、ジャンクを使って同じような回路を組んで、実際にカセットを鳴らしてみた。

これもいい勉強なのだが、スイッチを入れたとたんものすごいハムが飛び出した、カセットの音より大きい。電源はそのへんに転がっていた12VのACアダプターを使ったのだが、これが残留ハムというものか。9V電池だと問題ないのでそうなのであろう。たしかに1mV級の増幅回路への電源となれば当然並ではだめなのだ。数kΩと数百マイクロのフィルタを入れて、ハムはおさまった。音を聞いてみると、うーん、そこそこいい音ではないか。特に、昔のブルースの録音などは音源そのものが、今のシャリシャリの音作りではなく、実に渋い音域なせいか、カセットでも十分楽しめる。Tボーン・ウォーカーの、あのジャズっぽいギターと甘い歌声にしばし聞き入った。

実験もうまく行ったので、紙の上で手計算で設計である。コレクタ電流は、雑音を考慮して少な目、でもあまり少ないのもな、と、あまり根拠無く0.2mAとし、コレクタ抵抗を大きめにとって、エミッタ抵抗をその十分の一ぐらいにすれば、まあ10倍ていどのアンプになるだろう。しかし、こうして自分で設計してみると、分からないことがたくさん出てくるが、きっと、そのうち上達するだろう。さて、素子値が決まったので、部品を集めて製作である。トランジスタは差し替えられるようにソケットにした。汎用の2SC1815を十本と、一応低雑音の2SC1345も何本か買ってきた。あとはふつうのCとRである。電源のフィルタ用コンデンサーは、たまたま秋葉原を歩いていてみつけた4700μが100円だったので、これを買って使ったが、これは実際にはでかすぎで、回路が安定するまで1分だかかかってしまう。まあ、カセットを入れてプレイボタンを押す頃には大丈夫だろうということで、このまま使った。回路は割とスカスカにおおらかに配線して写真のようになった。

カセットをつないで聴いてみると、なかなか良好である。S/N、歪みやf特などまるで分からないが、聞いた感じは実用レベルに十分であった。そのうち測定器も揃えて追求してみることにしよう。