自作CDデッキ実用機、しかしCDドライブを箱に入れただけ


とうとうCDデッキ実用機ができあがった。しかし、情けないことに、結局、買ってきたコンピュータ用CDROMドライブを電源と共にキャビネットに収めただけ、という代物になってしまった。実に不本意であるが、これもあれこれ悩んだ末、実用性を最優先してこうなった次第である。簡単に経緯を書き留めておこう。

第1弾は、52倍速のCreativeのInfra52xを使ったが、回転音の騒音がひどく却下、第2弾は、8倍速の中古ドライブを使って騒音は問題なかったが、CDRの音飛びのため却下、ということで第3弾を目指して進めていた。この間に、新宿のソフマップで、秋葉原の道ばたジャンクで、Yahooオークションで、4、5台はドライブを買ったのだが、どれもうまくいかずゴミになって行った、実にもったない。こうなると、もう完全に意地になっていて、CDドライブが売っていそうなところへ行くと、条件反射のようにドライブあさりをしてしまう悲しい状態になる。

さて、少し前、韓国ソウルへ行ったときのこと、韓国人の友人に電気街のありかを聞いて、さっそく行ってみた。これはCDドライブあさりのつもりではなく、真空管と、真空管周りの部品あさりと、あとは純粋に見物のためである。ソウルの秋葉原に相当する街は竜山というところである。ソウルで普通の人に電気街の場所をたずねると、まずこの竜山の名前が出てくる。しかし、そこは韓国人の友人がいることの強みで、実は、竜山電気街ができる前のひと昔古い電気街がいまだに存在しているのである。せっかくなので、行ってみたいという人のためにいくらか詳しく紹介しておこう。

ソウルの銀座に相当する明洞(ミョン・ドン)の近くの駅、乙支路3街(Eujiro 3-ga)から地下鉄沿いに乙支路4街(Eujiro 4-ga)に向かう大通りを、左側を見ながら歩いて行くと、そのうち何となく金物の店などが現れ、気配がしてきたと思えば、ほどなく、三階建ての、ほとんどひと駅分は続きそうな細長い古い建物が通りから左にむかって延びている、その入り口にぶつかる。この場所の名前は忘れてしまったが、行けばすぐに分かる。この建物、秋葉原のラジオデパートが十個ぐらい入りそうな巨大さである。もっともラジオデパートのような電子部品売り場というより、とにかく電気周りのいろんなものが売っている。さらにこの建物の周りの地上にもかなりの広いエリアにわたって電気関係の店がぎっしりと並んでいる。全体にかなり古びていて、扱っているのはオールアナログものである。実は、どうやら、このエリアにあったデジタル、コンピュータ関係の店が竜山へと移って行ったらしいのである。好きな人なら一日じゅう歩いても飽きないと思う。

僕はこの界隈を半日ぐらいうろついて、なかなか楽しかったのだが、肝心の真空管などは結局ほとんど見つからなかった。そこで、今度は竜山へ行ってみた。地下鉄の竜山駅を降りて地上に出ると、もう、見た目が秋葉原である。この竜山では真空管はあきらめ、うろついていると、コンピュータジャンク街にぶつかり、ぶらついていると、山のように中古CDドライブが売っているコーナーを見つけた。ここで即、案の定、CDドライブあさり病が出て、結局、8倍速、16倍、24倍と3つもドライブを買ってしまった、すべて千円ていどの韓国製である。

さて、日本に帰ってチェックしてみると、8倍はハナからドライブが回らずNG、16倍はオーディオCDはかろうじて鳴るが、CDRに至っては認識もしない。まあ、こんなものなのである。それで、残りの24倍速であるが、これはなんとまともに鳴ることがわかった。ディジタルアウトからD/Aコンバータ(DAC)に入力してみるとDACもロックした、それになによりCDRでも音飛びがほとんどない。我が家でもっとも質の悪いMr.Dataという台湾製激安メディアを高速で焼いた粗悪CDRでも、全部聞いて2回ほど飛んだが、ほとんど大丈夫である。回転の騒音もぎりぎり耐えられるていどである。これは使えそうだ。

そこで、さっそくばらしてドライブメカ部分だけを取り出したが、またまたこれがけっこう厄介な構造で、基板との間のフィルムケーブルの長さが足りなさそうである。加えて、操作ボタンが、2つだけで、イジェクトとプレイがひとつのボタンで兼用になっている。これもなかなか厄介である。予定では、飛び出し式のCDトレイを撤去し、メカ部分だけを厚いアルミ板に固定し、上からCDを出し入れする方式にするのであるが、これはかなり難しいことが分かった。まあ、不可能ではないが、相当の労力が要りそうである。

ここに来て、とうとうメカ独立作戦を止め、とにかく早めに実用CDデッキを完成させることに作戦変更した。そもそもメカ独立手法は、ネットで話題になったすごい手法で、本来なら、8mm厚の片手で持てないほど重い銅板にメカ部を固定することによって恩恵が得られるのである。しかも使うドライブの基本はCreative製のInfraというオーディオを考慮して作られたドライブでなければいけない。僕のはそもそも、3mm厚のアルミで小指でも持ち上がる軽さで、ドライブは怪しげな韓国製の中古なのであり、全く本来の趣旨から外れてしまっている。ならば、もういいや、という考えである。

ドライブを再び元に組み立て直し、そのまま使うことにした。秋月で買った5Vと12Vのスイッチング電源と一緒にひとつの筐体に収めて、それでよしとしよう。以前の第1弾、第2弾では、ドライブのデジタルアウトをバッファで受け、同軸と光出力の2種で出力するような回路を自作してつけていたのだが、これもついでに止めた。ドライブのデジタルアウトをそのままRCA端子で出し、そのままDACへ接続することにした。3mm厚のメカ固定用のアルミ板を、新キャビネットの底板に流用し、ここに電源とドライブを固定し、前面パネルは第2弾のとき使った上板を切り刻んで流用、そして背面パネルは1mmアルミ板、これらをL字金具で底板に固定した。上板と両サイドは、木を切ってもらい、コの字型に接着し、筐体のアルミにネジ止めした。と、まあ、そんな訳で写真のようになった。

できあがって使ってみると、うん、確かに快適だ。CDはイジェクト式で、上から手動で入れるのに比べて格段に便利だ。音だって、別に文句はない。業務用DACは特性も抜群できれいな音である。ルックスだってなかなかお洒落で、よくできている。しかし、考えてみると、結局、これはドライブを箱に入れただけで、電子工作とは呼べない、ただの工作である。それにしても、今でもちゃんと我が家のメインCDデッキとして使って支障ないのだから、まあ、よしとしよう。