コツというのは一種類じゃない、人の数だけあるのだ


これは、長年、中華料理の趣味を続けてきたことで分かったことである。特に料理というのは、ちょっとしたコツが至るところで出てくる分野でもある。例えば、今、自分が作れる一皿の料理の作り方を、そのちょっとしたコツも含めて説明しようとすると、かなり厄介なほど長々と説明することになってしまい、だいたい聞いている方がうんざりしてしまうのが常である。そこで、コツの部分をはしょってみると、今度はその辺のレシピーブックに書いてあることとほとんど同じになってしまう。ということで、ならば、自分が行っているコツを科学的に根拠付けして、体系化して説明すればいいのではないか、ということになる。実際、僕は、いままで習得してきた中国料理について、そのようなことを試みて、詳細な解説書を作ってみたことがある。さて、最近のように料理解説書がさかんに出版される世の中になると、同じことを考える人達がいて、他の人のものを読んでみると、その、コツに相当する部分がめいめいではなはだしく異なっていたりする。では、誰かが正しくて、誰かが間違っているか、というとそんなことはなく、みな、自分のやり方で作った料理は旨いのである。ということで、結局、何か一種類の目的を達成しようとするときでも、それに伴うコツというものは人の数だけある、ということになる。したがってどういうことになるかというと、本をいくら漁っても料理はうまくできるようにはならないわけで、自分で納得が行くように自分だけのコツを習得しなければならない、ということになるのである。そうやって身につけたコツというのは、たとえオリジナルは別の人のものであっても、結局独自性を持つものなのである。前記たくさんの料理人達も、別にまったく独力でそれを身につけたわけではない。しかし料理書が書けるほどになった人のものには必ず個性が感じられる。これは、およそ、ほとんどのものに当てはまる、単純明快な事柄だと思う。