ただ一度だけ、ゴーギャンやベルナール達が試みた宗教画を非難して、自分の描くオリーブは少し生硬で荒っぽいリアリズムだが、それでも荒寥とした調子が出ており、壮絶さが感じられるだろう、と言っている。彼はオリーブの木を数多く描いているが、中でもクレラーミュラー美術館にある、肌色の土と緑色のオリーブ林と空の青を対比させ、うねるような筆触で描いたものは、まさに荒寥とした壮絶さを感じさせ、天に手を差し伸べる殉教者、灼熱の大地、かげろうのようにゆらめく風景を連想さすのだ。荒寥を死に、壮絶を絶望と読み換えると、その風景は、死によって最も大切なものを奪われた人間が、もはや取り返しのつかない絶望に沈む、地上の悲しみを思わせるのだ。

 


ノート

オリーブ 1889年 サンレミ クレラーミュラー美術館