羅生門
(黒澤明)

いやー、これはスゴイ。物語のおもしろさは、芥川龍之介の原作「藪の中」によるものでもあり(もっともけっこう変えてるらしいけど)ちょっと置いておいても、映画自体がすばらしい。豪雨の中に残された崩れかかった羅生門、検非違使の出てこない取り調べの広場、そして藪の中、この3つのどれもが、その場所の回りが闇で閉ざされて、外界から孤立しているように感じられて、そのせいで、シーンからシーンに移り変わる様子が夢の中のできごとのように思い出されるんだね。あと、取り調べ広場で独白してる人物のデカさと、後ろで座ってる2人の人物の小ささもカメラによるマジックだけど、やっぱり夢のようだ。若かりし三船敏郎と京マチ子の演劇調の演技もけっこう唖然とする。で、最後の最後、雨があがって、羅生門から赤ん坊をかかえた男が出て行くシーンで、夢から目が覚めた、という風に終わる訳だけど、なんとなく、これもまた夢の中かもしれない、という感じが残るんだね。ということで、全体に、とてもシュールで、芸術的という感じがする映画だった。