マッチ工場の少女
(アキ・カウリスマキ)

フィンランドの人ってこんなに無口なの?と言いたくなるノリで始まる、マッチ工場で働く、不細工で、取り柄のない、死ぬほど地味な女の物語である。それにしても、このカウリスマキ監督の映像、僕の嗜好によほどぴったり合っているんだろうな、絵を見ているだけでも全然飽きない。いかにも北方という感じの、冷え切った空気の静けさ、色褪せたような風景が、これでもかというほど出てくる、いいねえ。でもね、ところどころにかかる音楽に、これはレニングラード・カウボーズのノリなんだろうね、物語と妙に不釣り合いなロカビリーがかった軽薄なブルースが使われていたり、悲惨な物語のくせして妙に過激に突き進むあけすけなところがあって、不幸に安住する湿ったところが全くないんだよね。今は地味で寡黙だけど、もう、すぐにでもパンクになって爆発する、という感じでね。この映画だけど、最後には、主人公の超地味なこの女性、男に遊ばれて、捨てられて、妊娠しても見向きもされない、と分かると、泣きもせずに、無言のまま殺鼠剤を買い込んで、気に食わないやつらに毒を盛って殺して回り、お縄、で終わる。やっぱり北方ってすごいや。