マルコビッチの穴
(スパイク・ジョーンズ)

面白いことを考えるもんだね。始めの方の、7と1/2階のオフィスとか、そこに居る人たちの言葉が微妙に狂っていたり、とか、オフィスでふと見つけた隠し穴とか、実にカフカ的だったけど、すぐに違う展開になったね。オフィスの穴をくぐると、名優マルコビッチの視神経のすぐ後ろあたりに入れてしまい、彼の私生活を彼の目を通してそのまま体験できる、なんてイイねー、割と誰にでも一度はある倒錯の欲望だよね。ストーリー半ばで、マルコビッチその人がマルコビッチの穴に入ると、その向こうの世界は、すべてがマルコビッチで、人々は皆「マルコビッチ、マルコビッチ・・」としかしゃべらない。このシーンは、文字通り大笑いしてしまった、ここで終わればショートムービーとしてとても文学的(?)だったけど、その先がまだまだたくさんあって、今風に、軽い気持ちで楽しんだ。ところどころ、けっこう2001年宇宙の旅みたいに感じるところがあったんだけど、2001年みたいに謎で終わらず、少し謎、ていどでエンディングを迎えるのも今風なんだろうね。