ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
( ジョン・キャメロン・ミッチェル)
イントロの音楽からしてただものじゃない。ファズのかかった、チョーキングのヨレた、調子っぱずれのこのギターインスト、これぞ60年代マリファナロックだ、と思った。これが第一印象。この人たち、ホンモノのパンクバンドなんだって? いや、凄いバンドがあるんだねえ。ボーカルのオカマの、この、苦悩に満ちた色気、いいねえ。全編、音楽も、ストーリーも、時々出てくるアニメも、人間達も、素晴らしいです。Origin of Loveいいじゃないか! 静かなバラードから入って行って「そのころ人間はまだ男と女は一体になっていて、丸太みたいな体に、目が4つ、口が2つ、足が4本・・」そしてだんだん激しくなってきて「神様が平和に暮らしていた人間をあるとき2つに引き裂いた。とたんに、男は女を求め、女は男を求め、渇望が生まれ、苦悩が生まれ、そして愛が生まれた」ってさ、そりゃプラトンのお話だけど、こんなに感動的に歌い上げた、この使い古された物語を初めて見たよ。あとさ、この曲、途中でパンク風に悪のりして「それがまた二つに分かれて、一つ目で足が一本、手が一本、ぴょんぴょんぴょんぴょん跳ね回る!」なんて展開するところ、大好きだなー。全編に流れる悲しみと優しさは、素晴らしいです。思わず、映画ポスターによくある、試写会を見た芸能人の一口映画評みたいな言葉を言いたくなっちゃう。