死霊のはらわた(The Evil Dead)
(サム・ライミ)

この映画は、一応、かつての自分をホラー映画の世界に引きずり込んだ作品なので、書いておこう。最初に見たときは、これでもかと畳み掛けるスプラッターシーンに、まともに目を開けていられなかったほどだったんだけど、結局、激しくハマってしまい、それからいったい、この酷い映画を何度繰り返して見たことだろう。特殊メークやストップモーションなど古臭い手法で稚拙なのであるが、そこで笑ってしまってはいけない。むしろ、それゆえに一種芸術的な味わいが出ているところが多々あるのだ。これを昨今の完璧なSFX手法で作ってしまうと、視覚と内容との間に齟齬がまったく無くなってしまうため、見ている人間は結局「視覚」だけに釘付けになってしまい、そこから出られなくなる。隙だらけの作品というのは、至る所に違和感を伴う隙間ができるため、視覚は常に適度に裏切られ、そこに知性や記憶や霊感やなにや色々な異質なものが入り込んでくる。それこそが作品を芸術にせしめるものなのであろう。つまり作品が「知的なもの」、になるのである。いや、ちょっと哲学に走ったが、昔の自分はまさにそう考えていたし、実は今でもそう思う。この映画、酷いスプラッターホラーなのでお勧めできないが、実は今ではスパイダーマンなどで有名なサム・ライミ監督のデビュー作の低予算ホラーなんだよね。やはり、さすがである。