ダーク・スター(Dark Star)
(ジョン・カーペンター)

こんなにヒッピーな宇宙モノSFはないと思う。この映画、ホラー映画界では今では大御所のかのジョン・カーペンターとダン・オバノンが若かりしころに共作した超低予算B級SFである。銀河系に発見された不安定な星を爆破する、というよく分からない任務の元にひたすら宇宙を航海する宇宙船の物語。地球を離れて何年もたった宇宙船の中は、もう、アメリカのそのへんの裏町のどこぞの倉庫そのもので、散らかってるわ、落書きはしてあるわ、それで乗務員たちもむさくるしい男ばかりで、疲れ切って、かろうじて顔を付き合わせて生活をしている。この、惰性な、あきらめな、倦怠感の塊のグダグダぶりがすごくて、それがハイテク宇宙船を背景にしてるのが見ていて面白くてしかたない。最後には、人工頭脳を搭載したしゃべる自律型ハイテク爆弾が発狂して、自殺(つまり自爆)しようとするが、船長のドゥリトルが船外に出て自殺を思いとどまらせるべく説得をする。何をするかというと、現象論について哲学問答をするのである。爆弾君はいったんは納得するが、しかし、その後そのまま哲学的法悦に入り込んでしまい、突然自爆し宇宙船もろとも吹っ飛んでしまう。さて、最後の最後、宇宙空間に放り出されたタルビーとドゥリトルは残されたわずかな交信時間で少し対話する。タルビーはかねてより憧れだった光り輝くフェニックス星雲の一部になりきって永遠に宇宙をさまよい、一方、地球ではプロのサーファーだったドゥリトルは、たまたま手元に漂ってきた宇宙船の破片をサーフボードに見立てて、目前に迫る星の大気圏へ突っ込んで行く。ここで映画は終わってエンドロール、のんびりとした田舎のカントリーミュージックが流れて幕、となる。いやー、このエンディングが、ホント、いいんだわ。なんだか泣けてくる、大好きな映画だ。