部品を集めて真空管ギターアンプを作ってみる
〜フェンダーChampをベースに日本の部品で作る〜
歪み系エフェクターとしても使える6V6GTギターアンプヘッドの製作


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Fujiyama Electric
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9 オーディオアンプとギターアンプ

一般論

ずいぶん昔、電子工作の雑誌を見ていたら、とあるコラムに真空管ギターアンプの回路図が載っていたのを見つけた。GIBSONのトレモロ付きギターアンプだったと思うのだが、まあ、変なトレモロ回路は置いておいて、いくら見ても普通のアンプの回路にしか見えず、雑誌をめくってこの回路図を見るたびに不思議に思ったことがある。そのころは、ギターアンプというのは特別なもので、普通のアンプとは別のものだと勝手に思っていたのである。

先に結論を書いておくが、ギターアンプとオーディオアンプは基本的には同じである。しょせんは小さな信号を増幅してスピーカーを鳴らす、というだけのものだからである。なので、この意味では両者は完全に互換性がある。オーディオアンプにエレキギターをつないでもちゃんと鳴るし、ギターアンプにCDプレイヤーをつないでもちゃんと鳴る。

それでは、違うところはどこなのだろうか。これは、一度、上記のように逆にして音を聞いてみるのが教育的効果が高いのでお勧めである。オーディオアンプで鳴らすエレキの音はほとんど使えない音であり、ギターアンプで鳴らすCDの音はかなり最悪である。あ、ただし、オーディオアンプでギター弾いてフルテンにしないこと、繊細で高価なオーディオシステムがイカレルかもしれない。

どちらも音をでかくする装置だが、ギターアンプはギターをつなぐといい音に、オーディオアンプはオーディオソースをつなぐといい音が出るように作られている、ということである。加えて、それぞれに必要な特殊機能が追加されていたりする、例えば、ギターアンプのリバーブとか、オーディオアンプのサラウンドなどである。

と、いうことで、ここでは、なかば独断と偏見で、ギターアンプとオーディオアンプについての対照表を以下にだらだらと書いてみることにするので、参考にしていただきたい。あるいは異議がある人も多いだろうから、そのときは議論のネタにでもしていただきたい。

 

オーディオアンプ VS ギターアンプ



オーディオアンプ

ギターアンプ

出力の大きさ

大出力が好まれる。理由は、でかい音を出しても歪まない余裕を持つため
逆に、近年では無闇にでかくない小出力アンプでまったりする、という方向性もあり

ハイパワーの理由はただひとえにデカイ音が出したいから

真空管かトランジスタか

普及オーディオからハイエンドオーディオまでトランジスタが主流。真空管オーディオは結局は趣味的なもの

なぜか真空管がとても優位。並みいる有名ギタリストたちはほとんどみなチューブアンプを愛用している(調べたこと無いが、たぶん)
トランジスタも、もちろん使われるが( JazzChorusとか)、結局はチューブの評価が高い

パワー管

真空管アンプの場合、パワー管に3極管を使うマニアが多数。5極管を使うときは負帰還(NFB)を必ず併用する。

5極管(またはビーム管)を使うことが大半。3極管のギターアンプはゼロではないがほとんど無い。

シングルかプッシュプルか

プッシュプルが大半。
しかし、シングルのアンプは、清楚で、素直で、きれいな音がする、などと言われ、根強い人気があり

プッシュプルが大半。
シングルは出力がたかだか 10Wなので、練習用かビギナー向けのアンプにしか使われない

負帰還(NFB)

負帰還をかけて、全体特性(周波数特性、歪み、ノイズなど)をよくするのが常識。特にトランジスタアンプでは必須。
負帰還をかけない真空管アンプも存在するが、マニアック。

歪み感を出すために負帰還は少量、あるいはかけなかったりすることも多い。
ただし、プリアンプ段やエフェクターで音作りをすること前提のアンプでは、パワー段では割りと忠実度を優先して負帰還をたくさんかけることもあるようである。
高域の負帰還量を可変にするプレゼンスなどというツマミを作って、わざと高域をギラギラさせるなどというオーディオでは論外なオモシロイこともしたりする。

オカルト部品の使用(コンデンサ、抵抗、ケーブルなど多数)

あり。
ハイエンドオーディオで重症な人多し

あり。
これについてはオーディオと似たようなもの

歪み

歪みは無条件に悪

いかに魅力的な歪みが出せるかが勝負

周波数特性

低域から高域までフラットなほどよい

かっこいいギターの音を出すためにはフラットではNG。いかに魅力的に「フラットでないか」を追求する。
段間のコンデンサ、バイパスコンデンサなどの値をいかに組み合わせるかという周波数フィルタ操作のノウハウが重要。

ダイナミックレンジ

直線が伸びているほど良い

歪みを追求するため、ダイナミックレンジが直線でない部分を様々に工夫して組み合わせて良い音を出す。
アンプ各段のどこでどうやって歪ませるか、そして、歪ませる段に周波数フィルタをどう組み合わせるか、といったところに各社秘密があるようである。

ダンピングファクター(DF

売り物のアンプでは10以上はある。スピーカーの制動を良くして癖のない音にするため。
一部の無負帰還の 3極管アンプなどでDFが1ぐらいのものもある。しかし、1以下はほとんどなし。

DFが問題になっているのを聞いたことがない。通常、5極管をNFB無しで使うとDFは1よりはるかに低く、0.01とかになっているはず。
DFが小さいと、高域がギラギラし、低域ではキャビネット共振を煽って箱鳴りを促進するので(いわゆるドンシャリ)、ギターではかえってカッコいい音になるからだと思われる。

電源のレギュレーション(アンプに信号が通っても、電源電圧の変動が少なければレギュレーションがいい、という) レギュレーションが良いほど、良い

レギュレーションの悪さにより、ギターの音信号が圧縮される傾向が出る(つまりコンプレッサーがかかる)ことにより、独特のブルース的音が出るなどと言われたりするなど、レギュレーションをよくすればいいわけではない。一方、電源のレギュレーションをよくしないとデカイ音が出ない、というのもあり、何をねらうかにより異なる。

使用者

聞く人

弾く人

使用条件

アンプに負担をかけない無理の無い音量で使用

ギターマイクの出力自体のダイナミックレンジが広大なため、基本的に、つねに何らか歪んだ状態で使用する。
しばしば音量を最大にしてディストーション効果を使用し、アンプに負担をかけまくる。

スピーカー

スピーカー込みのアンプはほとんど無く、アンプはアンプだけ。
したがって、アンプとスピーカーの組み合わせを楽しむ向きもあり

ほとんどの場合、アンプはスピーカーとキャビネット込みである。

付加機能、アクセサリー

基本は音量ツマミが一発あるのみ。
その他ではトーンコントロールがあるていど。

やたらたくさんツマミがあるのが普通。
トーンコントロールは当然として、ブライト、プレゼンス、イコライザー、クリーン/クランチ切り替え、リバーブ、トレモロなど多数

可搬性

据え置きが基本

持ち運びが基本。
したがって、機械強度がけっこう考えられて設計される。