寿司

寿司は世界でもっともよく知られた日本の国民食であろう。単に知られているだけではなく、いまでは寿司を出すSushi barは、世界的にもかなり浸透している状況である。しかしながら、自国を見てみると、寿司の歴史は長いものの、寿司がわれわれ大衆の日常食かどうか、と問われると微妙なところがある。

かつて昭和のころ、寿司は日常食というよりは、どちらかというと高級な食に属していた。東京ではそのほとんどが握り寿司が中心の江戸前寿司だが、寿司屋の店構えは高級割烹に似た感じで、こじんまりしていても高級感が漂い、しかも値段も決して安くはなかった。

この状況が変わったのはおそらく回転寿司と持ち帰り寿司が現れて広まったころであろう。回転寿司が定着するまではだいぶかかったが、いま現在ではむしろ回転寿司の店舗の方が多いぐらいの状況で、それにつれ値段もだいぶ安くなり、気軽に食べられるようになったといえる。もっともこれら回転寿司の大半は資本の入ったチェーン店系である。チェーン店が、ある食に目をつけて、それを画一化してコストを下げ、安値で提供して大衆に広める、という通常の構図である。

本大衆食サイトはチェーン店系は積極的に紹介しないが、ここでは寿司については、かつての「ときどき外食で贅沢する」という意味で「お出かけ系」と称する分類に入れて紹介することにする。

店構え

回転寿司でないふつうの寿司屋は今ではそれほど多くないとはいえ、町のそば屋と同じく、各街を探せば個人店舗のこじんまりした寿司屋が1、2軒は必ず見つかるであろう。外見は次のような感じが多い。

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街の寿司屋の外観(*)

寿司は生ものを扱い、とにかく清潔でなければいけないという大前提があるせいなのか、店の外装も内装も白木をメインにして明るくクリーンなものにしてあることが多い。蕎麦屋の茶系のルックスと対照的である。中は以下のようになっており、カウンター席とテーブル席があるが、基本はカウンターがメインで、カウンターの中に寿司職人がいる。これは寿司職人に直接口頭で注文するためである。

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街の寿司屋の店内のカウンター (*)

カウンターの中と外の間に冷蔵されたガラスケースがあり、そこに魚貝などのネタが並ぶ。カウンター側には一枚板が渡してあることが多く、職人は注文に応じて握った寿司をその板の上に置いて供する、ということがよく行われている。

握り寿司

世界的にも有名になってしまった寿司をいまさら料理として紹介するにも当たらないと思うが、寿司は、酢飯に魚貝などの生ものを合わせて握ったもので、客はこれに醤油をつけて食べる。以下は寿司の盛り合わせの例である。

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寿司の盛り合わせ。マグロ赤身、イカ、中トロ、ウニ、卵、茹でエビ、イクラに、かっぱ巻きと鉄火巻き、そしてガリ (*)

握り寿司の酢飯を「シャリ」、乗せた生ものを「タネ」または「ネタ」と呼ぶが、このネタの味わい、新鮮さ、種類が寿司の決め手である。ネタは、生魚、貝、エビ、イカ、タコなどの海鮮の生ものがメインである。シャリとネタの間にワサビを少し入れて握るのが定番だが、サビ抜きと伝えればワサビ抜きでも握ってくれる。

寿司と一緒に出されるものとしては、「ガリ」と呼ばれる甘酢に漬けた生姜がある。

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ガリ(生姜の甘酢漬け) (*)

寿司と共に出されるお茶は、寿司屋独特の大きな湯呑に入った緑茶が定番で、これは「アガリ」と呼ばれる。寿司屋に酒はつきものなので、ビール、日本酒で寿司を食べるのも定番である。

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アガリ(お茶) (*)

以下に握り寿司のネタの種類を記しておく。通常、二、三十種類は用意されているもので、その日その日に仕入れたネタによりその種類がいくらか変わる。客はカウンター席から中の職人にネタの名前を言って注文する。ネタを切り、シャリを握るだけなので、すぐに出てくる。通常、2個で一組になって出てくることが多い。寿司の一個は「一カン」という単位で数える(諸説あるが)。

生魚 マグロ赤身、トロ(マグロの脂が乗ったもの)、ハマチ(ブリ)、カンパチ、タイ、カツオ、サワラ、サケ、メカジキ、カレイ、スズキ、アイナメ、サンマ、など
光りもの コハダ(酢でしめてある)、アジ(みじん切りのネギ、おろし生姜を乗せて出されること多し)、イワシ(アジと同じく)、サバ(酢でしめることが多い)など
魚以外 イカ、生タコ、甘エビ、ウニ、イクラ、など
貝類 ホタテ、赤貝、アオヤギ、ホッキ貝、トリガイ、アワビ、ミルガイ、ツブガイ、など
煮もの アナゴ、ウナギ、など(甘辛い醤油ダレを塗って供されることが多い)
茹でもの エビ、シャコ、カニ、タコ、など
その他 出し巻き卵、ネギトロ、アボガド、など

巻きもの

巻きものは酢飯にネタを入れて海苔で巻いたものである。細長く巻いてこれを切って供するものと、コーン状に巻いてそのまま供するものがある。

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巻きもの。奥から、かっぱ巻き、鉄火巻き、納豆巻き (*)

巻きもののネタは、マグロ赤身(鉄火巻き)、キュウリ(かっぱ巻き)、カンピョウ、納豆などがある。コーン状に巻くものには、ネギトロなどがある。

ちらし寿司

酢飯を丸い木製の器の底に敷き、上に各種ネタとガリや海苔などを並べて供するのがちらし寿司である。これ一つで食事になるので、昼食時などによくメニューに入る。

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ちらし寿司。お吸い物がついて定食になっている (*)

その他のメニュー

寿司屋の寿司以外のメニューはそれほど多くはなく、刺身、茶わん蒸し、あら汁といったところだろう。刺身、そして刺身を盛り合わせた「お造り」は、主にゆっくりお酒を飲む客がよく注文する。あら汁は、魚貝を下ろすときに出る骨などのあらをダシにした味噌汁である。

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あら汁 (*)

回転寿司

冒頭に書いたようにこの回転寿司の出現で寿司は値段が下がり、庶民が日常で食べるものになったという経緯がある。

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回転寿司の店内 (*)

ベルトコンベアで流れてくる寿司を、めいめい好きなものを取って食べるわけだが、日本の回転寿司では、回転ベルトの向こうに寿司職人が数人いる店も多く、直接口頭でネタ注文できる、いわゆる従来寿司屋との折衷のような形の店舗が多い。

逆に、昨今は、もう職人も店員もほとんどおらず、カウンター席の目の前のタッチパネルで注文しベルトコンベアで寿司が目の前に運ばれてきて、それを取って食べる、という全自動回転寿司が現れたりもしている。この場合、厨房では機械が握っている場合も多い。

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タッチパネルによる全自動回転寿司 (*)

現在は、まだかろうじて店員が1,2人いて最後のお勘定をしたり客のアシストをしたりしているが、そのうち遅かれ早かれ完全無人の寿司屋になるであろうことを予感させる。日本で非常に古くからある寿司が、いち早くこのような未来的な形態を生み出すというのは面白いものだ。ちなみに海外では回転寿司はむしろファッションとして高級に属することもあり、非常にオシャレなSushi barがロンドンやパリなどにあるそうである。

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オシャレ系の外国のSushi bar (*)


(*) 画像はGoogleサーチで持ってきた無断転載である。写真撮影次第差し替え予定。