甘味処

コーヒーやケーキなどの洋物の飲食を提供するのが喫茶店だが、日本茶と和菓子を出す喫茶タイプの店も、甘味処、和風喫茶という名前でまだ残っている。ただ、喫茶店やコーヒーショップに比べると、大衆に浸透しているという感じはなく、和風のものを出す専門店といった印象の方が強い。あるいは、和を売り物にする観光客相手の甘味処が、寺社仏閣系の周りにあったりもするが、これは特に京都などで盛んである。

こういった事情から甘味処は残念ながら大衆食として定着しているとは言いにくく、むしろ少数派をターゲットにした高級店の方が目立つ状況である。日本の伝統の食がこの状況で少し寂しいが、大衆的な和菓子とお茶はもちろん生活の中では健在で、和菓子屋や日本茶の小売店は街でもだいたい見つかるし、スーパーやコンビニにも素朴な和菓子は必ず置いてある。

和風の甘味もの

ここでは、甘味処で出される特徴的な甘いものをいくつか紹介する。

あんみつ
あんみつ。左上のあんに加えてバニラアイスも乗って、白玉が入っている(*)

写真はあんみつである。みつまめにあんを乗せたのがあんみつである。みつまめは、 ゆでた赤えんどう豆、さいの目に切った寒天、求肥などに黒蜜または白蜜をかけたものである。これにあんを乗せ、さらにアイスクリームを乗せたのがこの写真のもので、クリームあんみつと称したりもする。いずれにせよ、これは和風の甘みものの傑作のひとつであろう。

焼餅を入れたおしるこ(*)

おしるこ(お汁粉)は、小豆を煮て砂糖を加えた汁の中に、焼いた餅や白玉粉を入れたものである。関東では、汁気のあるのがおしるこで、汁気を少なく作ったものをぜんざいと呼んだりもする。

くず餅。池上本門寺名物(*)

くず餅は、東西で原料が違っていて、この写真は関東のくず餅である。これは、小麦粉からグルテンを取り除いた粉を乳酸発酵させたもので作り、しっかりとして弾けるような歯切れのよい食感である。関西のものは葛粉を使い、透明感があってぷるぷるしている。いずれも、きな粉と黒蜜をかけて食べる。

かき氷。宇治金時(*)

かき氷は日本の夏の風物詩であり、庶民的なものである。氷をシャーベット状にかいて、各種シロップをかけたもので、夏祭りの屋台や、駄菓子屋、夏の海の家などでまっ赤な苺シロップやまっ黄色なレモンシロップをかけたものが大衆食として古くから定着していた。これがやがて発展し、いまでは甘味処のみでなく、夏になるとさまざまな店で趣向を凝らしたかき氷が提供されるようになっている。写真のこれは宇治金時で、抹茶入りの緑色のシロップに、大豆を甘く煮たあんが添えられたものである。

メニュー

以下は甘味処の主なメニューである。

お茶緑茶、番茶、ほうじ茶など。無料のことも多い。コーヒーを用意しているところも多い
みつまめさいの目に切った寒天、赤えんどう豆、求肥(ぎゅうひ)、フルーツなどに蜜をかけたもの
あんみつみつまめに小豆あんを乗せたもの
おしるこあずきを煮て砂糖を入れた汁に餅を入れたもの。ぜんざいとして出されるときは、一般におしるこより汁気が少ない
団子米粉で練った団子を竹串に刺して蒸して、醤油と砂糖で作った甘辛いタレを塗って焼いたり、あずきあんを乗せたりしたもの
くずもち粉で作ったぷるんとした餅に、きな粉と黒蜜をかけたもの。芋などのでんぷんで作ったわらび餅もある
ところ天寒天を太めの麺状に切ったものに酢醤油をかけてカラシを添えたもの。これは普通甘くない
かき氷氷を細かくかいて各種シロップをかけた夏の食べもの
和菓子ようかん、饅頭、最中、桜餅、かしわ餅、おはぎなど

甘味処は甘いものだけではなく、食事も用意していることが多い。和風をうたった店なので食事も典型的な和風のものを出すが、特に特徴的なものがあるわけではなく、店によってまちまちである。以下によく見かける甘味処の食事を上げておく。

焼いて醤油を付けて海苔で巻くいそべ焼き、きな粉と砂糖をかけたあべかわなど
そば・うどん一般的な汁蕎麦
赤飯もち米を小豆とともに炊いたもの
お雑煮鶏のだし汁などに餅を入れ、みつばなどをあしらったもの。正月の定番
釜飯米に鶏肉、しいたけ、たけのこなどの具を入れ、だし汁で炊いたもの。専用の一人前用の釜でひとつひとつ炊く

(*) 画像はGoogleサーチで持ってきた無断転載である。写真撮影次第差し替え予定。