中古8倍速CDドライブによる自作CDデッキ第2弾


第1弾のCDデッキ製作は、結局、52倍速の超高速ドライブの回転時の騒音が最後まであだとなり、現用をあきらめた顛末を前に書いた。ドライブはインターネットで話題になっていたCreativeのInfra52xというもので、コンピュータ用でありながらオーディオドライブとしてもしっかりと考えられたスグレモノのようである。しかし、確かに、ネットを見てみると、回転音の対策にみな苦労されているようである。騒音対策はどうも、ルックスや操作性とトレードオフの関係になるようで、それで僕は途中であきらめてしまったのある。

それでは低速のドライブではどうなのだろうか。騒音は大丈夫なのだろうか、音質はどうなのだろうか、操作性は、などいろいろ疑問がわいてくる。ソフマップあたりへ行くと、4倍速とか8倍速とか、古いやつが売ってる売ってる、それも千円とかのレベルである。だめなら捨ててしまっても別に惜しくはない、まあ、実験だけしてみようか、ということで中古の低速ドライブを買って鳴らしてみることにした。8倍速の中古CD-ROMドライブを1200円ほどで買った。

家に帰り、電源をつないで、デジタルアウトをDACにつないで、CDをトレイに入れた。しかし、これがうんともすんとも言わない、つまり回転しないのである。当然、このCDドライブはコンピュータ専用で、前面パネルには例によってイジェクトボタンと、音量とヘッドフォンジャックがあるのみである。手の出しようがない。そうか、CD入れただけじゃ鳴らないのか、これじゃしょうがない。それでは分解だ、とばかりネジを外してケースを取り外してみた。すると、今までプラスチックの前面パネルに隠れていた部分の基板に、小さなプッシュスイッチがふたつついている。あれ?と思い、再び電源をつないでCDを入れ、このボタンを押してみた。すると、なんだ、回るではないか。この二つのスイッチは、実は再生/曲送りボタンと停止ボタンだったのだ。デジタルアウトを再度つなぐとちゃんと音が出た。問題の回転音は、52倍に比べてウソのように静かである。

おっ、これは使える! と思ったとたん、もうすっかりその気である。音的には、現用のポータブルCD+DATと聞き比べても、僕の耳にはほとんど差が分からない。再生/曲送りと停止ボタンがあれば操作性は問題ないし、なにより、いままでさんざん悩まされた騒音の問題がまったくない。なんというか、見ていても、くるくるくる、と回っているという感じである。前のやつは、キーン、と目にも止まらぬ勢いで実際に風まで吹いてくる高速度だったのだ。というわけで、このドライブを、先に作ったCDデッキに新たに取り付けて使うことに即決定してしまった。このときは、中古品である、など一時的に忘れてしまっていた。だって、みなだって中古のCDデッキ使ってるじゃないか、別にいいや、と、少し前まで「オーディオ用として中古はちょっとねー」と思っていたのもどこへやら、という感じである。

さて、例によって、トレイ機構などを全部取り外して、ドライブ機構と基板の二つだけにする。旧式だからか、基板からドライブへフィルムケーブルが4つも走っている、けっこう厄介である。例の3mm厚のアルミ板の上にドライブを固定し、下に基板を固定し、穴にケーブルを通すわけだが、当然、前のドライブと穴の位置などはすべて異なっており、開け直しである。この金工が、また、工具のそろっていない我が家では大変なのだが何とかやってのけた。ケーブル類をつないで、再び音出しだが、ここでもうひとつの大問題にぶつかった。要は、CDを置いて再生ボタンを押しても、それだけでは回らず、電源を入れた後、必ず、なんらかのアクションを起こしてドライブをアクティブにしなければいけないように出来ていたのである。具体的には、電源を入れて、トレイにCDを置いて、イジェクトボタンを押しトレイを格納する、という儀式を経ないと使えないのである。これは厄介だ。

このためには、イジェクトボタンと、使用しないトレイ機構にマウントされたマイクロスイッチを、あるコンビネーションで操作しないといけない。まあ、さんざんやってみて、何とかその法則を見いだした。マイクロスイッチを入れたまま電源をオンにし、ちょっとしたらスイッチを放して、すぐに再び入れる、という動作でアクティブになる。どうやらこれは、トレイを空けっぱなしのまま電源を落としてしまい、ふたたび電源を入れたときに、まずはトレイが収納されるという動作のシミュレートのようである。あとは、この電源を入れたときの動作を、リレーか何かを使ってロジック回路で組めばいいのであるが、いや、なかなか面倒な話しである。

もちろん、イジェクトスイッチやらマイクロスイッチやら全て操作できるようにケースにでっかい穴でも開けておいて、電源を入れるとき手動でやるなどすればいいのであるが、我が家の装置としてはこれは失格である、僕だけでなく、彼女も使うからである。思えば、自分だけが使う機械なら、自作の楽しみと、本来の音質のみ重視で、操作性もルックスもずいぶんいい加減にやってしまうであろう。いまあれこれと作っている自作オーディオ機器のルックスと操作性がそれなりにできあがっているのも、実は彼女のおかげである。

というわけで、ロジック回路であるが、回路もろくに決まらぬまま、小型のリレーを買ってきて、手持ちのCMOSのインバーターとNANDだけで出来るように、何とか考案した。プロから見ると、きっとそうとうアマチュアくさい回路だろう。それにしても一応、リレーを望みのタイミングで動作させることができ、ドライブを電源オンとともにアクティブにすることに成功した。やった、やった、と思っていたが、実はあとでこれも問題ありと判明した。電源を入れてから、2枚目以降のCDで曲送りが正しくできない。すなわち、新しいCDを入れたら、必ずスキャンの儀式をやらないといけない、ということだったのだ。まあ、いい、この件についてはとりあえず後で考えることにする

さて、ルックスであるが、CDデッキの前面パネルのポイントは、再生と停止のモメンタリーの押しボタンなのであるが、リレーを買いに秋葉原へ行ったとき、あちこち探してかっこいいやつをたまたま見つけた。電源用の銀色のばかでかいやつで、サイケデリック時代のメタル製ロボットのイメージで、なかなかかっこいい。再生と停止の2個買って、これに合いそうな電源インジケータ用LEDを選定する。これはもう、大きな白色LEDで決まりだろう。第一弾デッキは縦置きであったが、こんどは横置きとし、右側に大きな押しボタン、左に大きな白色LEDとした。上板は、その後、東急ハンズで選んだ波加工のアルミ板、そしてCDを入れる部分は、つや消しクリアのアクリル板をちょうつがいで取り付けて、結局、写真のようなルックスに仕上がったが、なかなか気に入った。このルックスは、まあ、確かに世界に一台しかないCDデッキであろう

というわけで完成したCDデッキ、かなり悦に入り、CDをかけたりしていたわけであるが、ここで大問題が発生した。なんと、ときどき音飛びすることに作ってから初めて気づいたのである。これは迂闊だった。音飛びは、CDRをかけたときだけである。正規オーディオCDはまったく音飛びしない。そして、その音飛びCDRも、メディアが安いほどひどく、焼いたときの速度が速いほどひどい、という具合で、まるで板質チェック用ドライブである。しかし、我が家ではこれは使えない。なぜならCDRのコレクションが山のようにあるからである。

思えば、最初に中古でドライブを買ってそのまま音出ししたときにチェックしておくべきだった。しかしそのときは、音飛びなど考えてもいなかったのである。まあ、正規オーディオCDなら問題ないので、一応使えることは使える。そこで、オーディオセットの正規位置において使うことにしたが、ポータブルCDとDATのコンビは、CDR再生用として残ってしまった。第2弾CDデッキにして、またしても正式に完成しなかった。ところで肝心の音質であるが、どうも、ポータブルCD+DATより若干だが悪く聞こえる。たぶん、読み取り誤りぎりぎりで鳴っているんだなあ、という心理的原因による気のせいだとは思うのだが、踏んだり蹴ったりである。やっぱりもっといいドライブを物色しなければだめか。ネットで調べても、読み取り時の時間軸方向のジッタや、板質の劣化によるサーボの荒れなどによる音質劣化など、さまざまに書かれているところを見ると、きっとドライブの悪さによる音質の荒れというものもあるのであろう

しかしどう考えても悔しい。実は、基板上の電解コンデンサの交換、追加ということもやってみたが、ほとんど変わらなかった。そこで、同じ型式のCDドライブをオークションで落としチェックしてみることにした。100円であっさりと落とし、つないでやってみたが、残念ながらCDRの音飛びはそのままであった。2台ともいかれているとは考えにくいので、これはドライブの性能の問題のようである。

もう、こうなったら意地である。CDRがかかるCDドライブが見つかるまで、CDドライブ放浪を続けてやる、とばかりに、現在、オークションでCreativeの24倍速CDドライブを落とす作戦に出た。Creativeは、最初に使った52倍速のiR52xのメーカーである。iR52xはコンディションの悪いCDメディアでもエラーフリーで読めるのが売りのひとつであった。ということは24倍速のものでも、きっとその手の対策がなされているに違いない、との判断である。

しかし、それにしても、こうなるともうCDドライブオタクだ。何とか第三弾で終わりにしたいものである。