12AX7イコライザアンプ内蔵の2A3シングル無帰還アンプ。化粧板が未完成である


ブレッドボード上で試作した2A3シングルアンプは、初めて構想から設計まで自分だけでやったもので、運のいいことに一発で満足の行く出来になった。そこでこれに、セレクターとレコード用のイコライザアンプを内蔵して、実用的なプリメインアンプとして組み直すことにした。イコライザアンプは12AX7のCR型で、結局、オール3極管で負帰還なしのけっこうマニアックなプリメインアンプができあがった。2A3アンプの製作経緯については別ページで詳しく紹介したが、ここで構想のポイントだけ書いておこう。

構想のポイントはタイトでクリーンな音である。どうやらこれら構想と設計はうまくいったらしく、音はすばらしいもので、自分で設計したという満足感も手伝って結果は実に満足の行くものであった。ずっと実用として使っていた超3極管結合の6BM8アンプと比べると、やはり力強さが違うようである。ただ、超3もやはりたいしたもので、6BM8などという普及管に安い出力トランスで、ここまで対抗できるのは凄い。なにせ今回の2A3アンプは球も高いが、出力トランス、パワートランスそしてチョークといずれも高価で重くて大きくて、総重量およそ12キロの重厚なアンプなのである。

さて、これだけの重量があると、シャーシはやはり鉄製で、穴開けは業者にやってもらう、というのが順当かもしれない。しかし、どうもアンプ全体のまとめ方がはっきり決まらず、イコライザアンプの内蔵もどうしたものか悩んだまま解決しない。そこで、シャーシーの高さを未定のまま進めるため、上板だけにして取りあえずメインアンプだけ作ってしまうことにした。上板は3mmのアルミ板、穴あけは東急ハンズでやってもらった。ただ、これは予想外に高くついた。金工は一穴80円で、結局相当量の穴あけのため八千円を越えてしまった。アルミ板は、最初シルバーで塗装したが、ムラになり失敗し、水ヤスリでこすってみたら、これが結構いい風合いが出たので、これで行くことにした。配線は、B電源がふたつ、C電源もあり、ということでけっこう厄介であったが、まる一日かけて何とか終わらせた。

イコライザアンプは、以前製作して使っていた12AX7のCR型をもう一度見直し、作り直して内蔵することにした。以前の回路でf特を測ってみると、高域がRIAAカーブから割とずれていて、低域も50Hzあたりから減衰していて、ちょっと気に入らない。また、ゲインも約300と大きすぎる。そこで、あれこれ計算して、ゲインが約100でRIAAにうまく収まるようにCR定数を変更した。低域減衰についても段間コンデンサーを大きくして対策した。ただ、後から聞いたことだがレコードのイコライザでは超低域は落とさねばならないそうである。今回3Hzあたりにカットオフを持ってきた。聞いた感じは問題ないので大丈夫だと思う。前面パネル、背面パネルを取り付け、一段アルミの仕切を入れ、そこにイコライザアンプとセレクターを組み直した。直流点火とするためヒーター用トランスも追加した。実は、セレクターは本当は押しボタンで切り替えるようにしたかったのだが、そんなことをやっていると完成が果てしなく遅れてしまうので、後回しにしてとにかく使えるものを組み上げることにした。もっと言うと、ボリュームを電動にして赤外線リモコンでコントロールするようにしたかったのだが、これはもっと厄介である、今後の課題である。

実は、このアンプ、当然我が家のインテリアの一部になるわけなので、デザインについてはうちの彼女の意見を聞かなければいけない。そこで、彼女にデザインしてもらったのがこの右下の図である。キューブ型で、真空管などは金網の檻の中に入っている。LEDが左はじに来ず、右にあるというのも、真空管アンプデザインの先入観のない人のデザインらしく、なかなか面白い。こうなるとセレクターのツマミはやっぱり邪魔で、押しボタン、それもひとつボタンで、順次切り替わり、インジケータLEDが点灯するというのがオシャレであろう。もっとも、こうなるとロジックを組まねばならず、またオーディオに使えるリレーも調達しなければいけない。そのうち実現することにしよう。

さて、かなり時間がかかったが、ようやく使えるところまで出来た。ただ、回りの化粧板がまだであり、むき出しである。それにしても、やはり音は抜群である。ちょっと音量を上げて、ルーマニアのジプシーバンドTaraf de Haidouksをかけてみると、これがNFBをかけない2A3のむき出しの音というものなのか、楽器のひとつひとつの存在が荒削りですごい迫力である。それでもマイルスのKind of Blueをかけてみると、広々とした透明感もあり、MJQのミルトジャクソンのヴァイブの音も抜けが良く、全体に濃厚な感じである。12AX7のイコライザアンプもいい感じである。LPレコードでCannonball AdderleyのSomething Elseをかけてみると、すばらしい臨場感で、スピーカーの外まで音が広がっている。Anita Oユdayのボーカルもいい。

さてさて、最後に特性を再びチェックしてみた。結果と回路図を最後に載せておくが、実用アンプとしても問題ないレベルをクリアしている。特性がこのぐらい出ていると、何というか安心である。それにしても、やはり大きな直熱3極管に大きくて重いトランスというもの、何かこうずっしりとした安定感があり、それが音にも出ているように感じられる。やっぱり真空管アンプというもの、ビジュアルの安心感の生み出すサウンドという気もしないでもない。上記特性のたかだか3Wのアンプなど実際にはICやらを使えば、電源も入れて手のひら乗るていどの大きさでできるはずである。しかし、それじゃあ、この安心感はやっぱり得られないと思う。

 

■特性

出力 3W + 3W(目視無歪み最大)
周波数特性 15Hz 〜 30kHz (-1dB)
ダンピングファクター 1.6
歪み率 -
残留ノイズ 1.1mV
クロストーク -51dB以上(20Hz 〜 20kHz)
RIAA偏差 1.3dB以下

■回路図

 

パワーアンプ部

 

イコライザーアンプ部

 

電源部