秋葉原って臭いねー


小中学生のとき以来、ふたたび秋葉原に通い始めたのは、真空管に凝りだしたからだが、通いはじめの初日は夏の終わりで、まだじゅうぶんに暑い頃だった。日曜の秋葉原は広い目抜き通りが歩行者天国で、かなりの人手である。通りに立ち、回りを見回したこのときの印象は、とにかく男ばかりだ、ということ、それも服装に共通した特徴があり、皆なんとなく黒ネズミ色なのである。ひところサラリーマンたちの服装がどぶねずみスーツなどと悪く言われたことがあったが、こちらはもっと黒いのである。やっぱりなんとなくアンダーグラウンドの雰囲気がただよっている。で、小さな路地や、何やの店舗街へ入って行くと、夏ということもあり、男の臭いふんぷんたるものがある。お店の人も、客も、皆ひとくせありそうな人ばかりで、かなり濃厚である。ところ狭しとならんでいる、あれこれの電気部品、工作機械や工具の数え切れないバリエーションと、むさ苦しい男たちのバリエーションとが、競い合っているようで、これぞ秋葉原、という風で、なかなか飽きさせない。とにかく、秋葉原というところ、臭いも臭いし、集まっている人の性質も臭いし、街作りも電気街臭いし、何もかも秋葉原臭いところだよね。しかし、その後、何度も通うようになって、とくに臭いとも思わなくなってしまったところは、つまり慣れてしまったか、この僕も臭い一員になってしまったか、といったところである。もっとも、最近は息が詰まる気がして長居しなくなり、用事が済むと即、街を出てしまうのだが。