いままで生きてきて、一番長く、一番まじめにやって来たのが音楽なのだが、どうも書くことがないのである、不思議である。他のこと、例えば中国料理、真空管アンプ製作、エッセイや絵画についてはいくらでも出てくるのに、かんじんの音楽はだめなのはなぜだろう。ギターを弾いてもう25年以上たち、それなりに、ときどき満足できる演奏もできるようになった。しかし、他人に語っておもしろいような系統だったものがほとんど出てこない。と、いうことであまり肩肘はらずに、ここでは音楽について思いついたことなど、ひたすらだらだらと書き留めておくという程度にしておこう。

タブ譜を書いてみた

YouTubeに演奏ビデオをアップロードするようになってしばらくたつのだけど、外人からのコメントがパラパラとついていたりしてなかなか励みになるし、何か嬉しいね。海の向こうの見ず知らぬ人とこんなに簡単にコミュニケーションできるってスゴイや。外国でむかしよくやったストリートミュージシャンを思い出すなあ。地元のヘンなやつとかが集まってくると、ホント楽しい。ネットでもストリートミュージシャンができるサービスとか、ちょっと考えればできそうだね。なーんて、商売は抜きでやってみたい気はするな。ネットで当てた人たちが儲け抜きでそういう実験的なことをやってくれないものかな。

と、まあ、そういうわけで、YouTubeのコメントに「Youとってもスゴイね、タブ譜をポスト、プリーズ!」というのが何件か来ていたので、ちょっと作ってみた。テキストだけ使ってローテクに書くんだけど、けっこう簡単じゃん。ジミヘンドリックスのエンジェルのタブ譜を書いて、とりあえずアップしてみた。これからも、なんかリクエストがあったらタブ作って載せるつもりです~

タブ譜の最新は、英語ページのココに全部あります。

SWEET HOME CHICAGO : Robert Johnson
ME AND THE DEVIL BLUES : Robert Johnson
DRIFTING BLUES II : Arranged by me
DRIFTING BLUES : Eric Clapton
FROM FOUR TIL LATE : Robert Johnson
KINDHEARTED WOMAN BLUES : Robert Johnson
IT HURTS ME TOO : Elmore James
PRIDE AND JOY : Stevie Ray Vaughan
KEYTO THE HIGHWAY : Big Bill Broonzy
PLEASECOME HOME FOR CHRISTMAS : Charles Brown & Gene Redd (by Eagles)
ANGEL(acoustic version) : Jimi Hendrix

下記のものは、ココで公開してる「弾き語りブルースギター講座」の中のタブ譜を英語にして抜いたものです

-Very basic blues pattern
-Basic pattern with a bit
-Basic pattern with chord sound
-Basic blues
-'Magic Sam' style
-Blues solo

YouTubeに演奏ムービーをアップしてみた

YouTubeっていうのはホントにスゴイ。古いブルースマンたちの映像だって、キーワード入れてエンターキー押せばバラバラと出てくるので、すぐに見れちゃう。むかしはブルースマンの映像なんて日本じゃ手に入らないので、まるで裏ビデオ取り寄せるみたいに怪しい輸入業者や海外業者にコンタクトを取って、船便で半年ぐらい待って到着。それで、当のビデオは、もう何回ダビングしたか分からないような激しく画質の悪いVHSテープで、それでも、ノイズだらけの歪んだ白黒映像に見入っては「動いてるライトニン・ホプキンスが見れるなんてオレはシアワセモノだ!」と感激に涙したものである。それが、まあ、ずいぶんとインスタントになりましたな。世の中便利になった、と俗に言うけれど、こういうことになると2倍や3倍便利になったというより20倍とか30倍とか、果ては100倍ぐらい便利になってる感じで、もうそうなっちゃうと便利を通り越して、世界が変わっちゃってる、って思う。まことに隔世の感がありますな(ジジイ)

それから、YouTubeで曲名をキーワードに入れたりすると、アマチュアの演奏がかなりの数、出てくる。ロバートジョンソンの曲なんか、ホントいろいろな国の人たちが自分の演奏をアップしていて、View数もコメントもずいぶんとついていたりして、なかなか楽しそうである。と、いうわけで、自分もYouTubeに自分の演奏をアップしてみようと思い立ち、やってみた。そうしてみたら、これもなかなか楽しいのである。特に、知らない外国の人から、お褒めのコメントをもらったりすると素直に喜んじゃう。いやー、こういうことも、まったくのところ世界が変わったよね。ちょっと前では想像もできないようなコミュニケーションが、こんなに簡単にできちゃうんだから、やっぱりスゴイ! 下に、アップした演奏ムービー2,3個上げておきます~。ちなみに、右下の「YouTube」ってのをクリックすると元のムービーがたどれます。

Kindhearted Woman Blues Terraplane Blues Hey Joe

レコーディングというのをやってみた

Gypsysを結成してもう3年になる。最初しばらくはマメにライブをやっていたけど、なかなか活動維持は難しく、それで1,2年前に、コンスタントに取り組むことができるレコーディングってのを始めた。で、もう1年以上たってるのにまだ完成しない(笑) とはいえ、細々と続けたかいがあり、全8曲の録音がほぼ終わり、ミックスダウンを待つのみ、っていうところまで来た。

一発録りがホントは一番いいんだろうけど、これは設備的にも難しく、またプレッシャーも大変なので、個別録りミックスとした。エンジニアなどはつけずに、ベースの桜井さんの個人資産の録音機器群をひたすら車と手で狭いスタジオに運び込み、自前の録音である。ベースの録音は、まずは、ドラム。夜の9時からスタジオを借り、機材を運び、セッティング。ドラムには、なんと22本(たしか)もマイクを立ててマルチ録音である。ギターとベースと歌は、ガイド役として演奏し、ミックスした音をめいめいがヘッドフォンで聞いて演奏する。ドラムのキンさんは、さすがプロ、ほとんど一発録りでOKが出る。とはいえ、機器の操作その他がえらく大変で、終わったときはもう深夜の2時ごろになっていて、最後の方は、ほとんど意識朦朧である

さて、このドラムのマルチ録音を大切に持ち帰り、今度は、桜井さんの自宅のスタジオで、ベース、ギター、歌を入れて行く。このとき、僕は、初めてヘッドフォンでドラムを聞きながら、サイドギター、リードギターと入れていったのだけど、これが最初はすごく難しかった。ヘッドフォンのドラムでは、リズムにまるっきり乗れず、けっこう焦った。でも、しばらくやっているうちに慣れ、そこそこ出来るようになった。あんまりテイクは重ねず、出たとこのソロでGO

で、最後はボーカル。なんか、これが、とっても気持いい。ほら、よくレコーディングスタジオにある、大きな吊り下げマイクの前に、息よけのシールドを立て、その前にヘッドフォンして立って歌っていると、ホント、オレってプロみたい! と、無邪気に喜んでしまう。ギターはミスのプレッシャーがあるけど、歌はそれほどプレッシャーもなく、のびのび歌える。3ピースバンドなので、普段、ギターでバッキング、リードを弾きながら同時に歌っているのだが、こういう状態だとなかなか歌に入れ込めないところがあるのだが、歌だけだと、とても神経が歌に行き渡る感じが新鮮だった

ま、というわけで、あとはミックスダウンと、CD化と、ジャケット作り、ってところなんだけど、仮ミックスがあるので、予告編として一部を公表します~。ちなみに、すべてロバート・ジョンソンのアレンジものである

Traveling RiversideBlues
Terraplane Blues
Stop Breaking Down
From Four Til Late
Phonograph Blues
Dust My Broom
32-20 Blues
Kindhearted WomanBlues

Gypsysホームページ開設

ここの項目なんだけど、ページの更新を失敗して原文がなくなっちゃった。と、いうわけで、僕のやってる3ピースのブルースロックバンド「Gypsys」のHPを下に載せておきますね。もっとも、ライブ活動とかずーっと休止中なんだけど。メンバーが忙しくて

Gypsys ホームページ

音源をいくつか

音楽歴じみたものは、おもしろおかしく古いページに書いておいたので、それでいいとして、最近の演奏の音をいくつか載せておこう。とはいえ、人様に聞かせるべくちゃんと録音した音源がほとんどなく、そこそこのものばかりで失礼します。

- I've Got To Move(620KB)
オリジナルの多重録音です。特に歌唱法に、大好きなジミヘンドリックスの影響が大です
- Come On(live recording) (890KB)
BBB (Blues BreakupBoys)というブルースロックバンドの絶頂のころの演奏です。大田区大森のヘイル・メリーというアメリカンバーでのライブです。マスターのジンちゃんは僕と同じ年で、いい友達だったけど、さいきん死んじゃいました。ジンちゃーん聞いてっかー
- HoochiCoochie Man (live recording) (1.2MB)
同じくBBBのライブです。オールマンブラザーズバンドの演奏を元にしています
- Dust My Blues(unplugged) (140KB)
衝動買いしたHarmony社のRocketというフルアコエレキで、エルモア・ジェイムズの有名なブルースを弾き語りしてみました

ロバートジョンソンの曲をいくつか弾き語りでラフに録ってみました。彼の曲はもうずっと前からやっていますが、あらためてやってみると、いろいろな発見があるねー。本物はさらっとやってるけど、普通は気づかないような細かい仕掛けがたくさんあるんですね。僕のは半分ぐらいはアレンジしてやってます。データがでかくなってきたので、下記へどうぞ
林正樹ホームページ用mp3

エレキギターによるアドリブについて

エレキギターをバンドで演奏するときの、自分なりの語録でも書いてみることにしよう。ただし、これは僕の演奏にとってのなにがしなので、他の人には何の役にも立たないのでよろしく

  1. 一続きのソロを取るとき、なるべく長く持たせるように、あの手この手で長引かせること。これは実はエロとほとんど同一である。男のきみは分かるよね~(笑) しかし、やった!! 僕の他のページでは決して出てこないエロネタがついに音楽のページで登場だ! それにしても、そういうことか、趣味はいくつもあるけど、音楽だけがエロ側なんだね、それで書き方が分からないんだ(一人で納得)

  2. これで行こうかな、で、次はこれ、そうそう、これもこれもあったっけ、という風に、指を動かしながらネタを繰り出すことを頭で考えられるようにすること。演奏しながら、そのような心の余裕を持つこと。これもちょっとエロだな~

  3. 夢中になって乗りまくって陶酔してやった演奏の出来は悪い。弾いているときは、オレってすごい! と思っているが、後で録音を聞いてみると、単調な演奏であることが多い。逆に、なんでオレはこんなにうまく演奏できんのだ、くそー、と感じながらの演奏の方がぜんぜん出来が良い。理想的なのは、演奏しながら上の空で別のことを考えられる幽体離脱状態になったときである。このときは、体は演奏しているのだが、「おっ、うしろから2段目にきれいなネーチャンがオレを見てる、いいなー」とか「この真ん前の男、頭ハゲてるじゃん」とか思いつつ演奏している。このときの演奏がいいんだなー、なぜか

  4. 出てくる音はまあ置いておいて、フレットからフレットへ移る運指を、ねちっこく、ねばっこく、なめるような感じで動かすこと

  5. 一つのフレットの上に指を置いておく時間を出来るだけ長くすること

  6. けっこう簡単で効果的なのは、フレットの上を押さえたら、いちいちその上で指を振動させ、弦をフレットに微妙に擦りあわせてバイオリン的に音をサスティーンさせる。これは特に低音弦で威力を発揮する。ただしやりすぎると、下世話な遊び人の独りよがりな女の扱いのように、イヤミにうつってしまうので注意

  7. 人生と同じく演奏も長い。一小節目で失敗しても二小節目がある、1コーラス目で失敗しても2コーラス目がある、一曲目で失敗しても、二曲目があるさ

  8. フレーズの起承転結を、コード進行の起承転結にぴったり合わせてしまうと演奏が単調になるので、ときどきずらす。特に12小節のブルースは4小節ごとに起承転結がやってくるが、4小節フレーズの組み合わせのソロばかり弾いていてはダメ

  9. たまにはミストーン覚悟で冒険しようよ!

  10. 強弱のダイナミズムはものすごく重要だけど、強いと弱いの間に断絶を作らないこと。セクシーな女性の体の線を思い出そう、強弱がはっきりしていて、その間が滑らかな曲線でつながっている。そこがいいんだよなー

  11. 使い古された定番フレーズを、ものすごく堂々と弾けるようにしなくっちゃ。そのために見えないぐらいに細かい自分なりの仕掛けを入れるんだよね。結局、フレーズなんて平凡でも構わなくて、要はどうやってそれを自分だけの演奏にするかなんだねー。これはジミヘンやレイボーンのソロを聞くとよく分かる

    とりあえずここまで、またねー!

ロバートジョンソンの歌詞について


僕をブルースの世界に完全に引きずり込んだのは、かの戦前弾き語りブルースマンのロバートジョンソンである。どうやら彼は特殊な電波のようなものを発しているらしく、これに感応する性質の人間にひどいダメージを与えるらしい。いろいろなところで、僕と非常によく似た、いわゆる「ロバートジョンソン体験」をした人を見つけるからである。ということで、この体験談はみな非常に似たもので、僕がここで繰り返すのは止めておき、ここでは、ちょっと彼の歌詞について紹介してみようと思う。

彼の書いた詩は、その独特の音と相まって、とてもはっきりしたイメージを感じさせ、なにか視覚的に脳に焼き付けられるようなところがある。それでは、いくつか和訳を紹介する。僕の英語力の範囲なので、ミスもあるかもしれない。原詩はネットでサーチすればいくらでも出てくるので、そちらを参照されたい。

四つ辻へ行ってひざまずいた
四つ辻へ行ってひざまずいた
神様、どうかこの可哀想なボブをお助けください

その昔クラプトンが演奏し有名になったクロスロードブルースはこんな風に始まる。とても単純な状況の描写だけど、すごい視覚的なイメージの力があるねー。絶望した人が、通りを降りてきて、四つ角で急にひざまずく、そんな情景が目に浮かぶよう。ところで本当はこんなことはしちゃいけないんだけど(それを言うならこの写真もダメだけど 笑)、ここを押すと、上記の演奏が聞けます。ハイトーンの声とスライドギターが、なんというか、崩壊寸前のあばら屋を揺さぶるような、張りつめた感じを出しています。

俺が愛したあの女は、友だちから奪った女だった
またどこかの悪党が運をつかんで、彼女を奪い返すだろうよ
俺のキッチンへ入れよ、外は雨が降りそうだからな

最後の文句、何か隠喩があるのかもしれないけど、まるで白黒の古い映画を見ているような感じがする。嵐の前のような、もの悲しいような、尋常じゃない何かが漂っている、この感じはロバートジョンソンのものですねー

俺の死体をハイウェイのそばに埋めたっていいんだぜ
俺の死体をハイウェイのそばに埋めたっていいんだぜ
そうしたら、俺の汚い、よこしまな魂がグレイハウンドバスに乗ってさまようから

実に絶望的な、殺伐とした、何の救いもないような文句ではないか。ちょっと、その昔のフランスの実存主義的苦悩が漂っていて、かなりシュールですねー

俺がつかまされたのは死んだエビ、誰かが俺の池で釣りをしていやがる
俺がつかまされたのは死んだエビ、誰かが俺の池で釣りをしていやがる
俺はおまえに特上の餌をやったし、ひどいことなんかできやしねえよ

彼の詩は、エロチックな隠喩が多いことでも知られてるけど、これもそのひとつ。「池」が女性を表していて、だれか男がそこで釣りをする、つまり女が浮気しているという意味である。それにしても死んだエビとは何だろう、これも当時何かを意味した文句かもしれないけど、それを知らなくても、非常によく分かる感覚なのはなぜだろう。言語を越えた、なにかのイメージを伝搬しているようにも感じるよ。と書いたその後、アメリカのサイトを漁ってて分かったんだけど、死んだエビはインポテンツのことを指しているらしい。そうか、曲がったまま決して跳ね上がら(pop)ない、死んだエビ、なるほどね~、感心。

ソファの上でもやったし、壁のところでもやったよな、でも俺の針は錆びてしまって、もうぜんぜんできないよ

これも、蓄音機を女性に、レコード針を男性にたとえた詩だ。彼は、レコードのすべての演奏をホテルの一室で録音したが、そんな話と相まって、暗い室内、ソファ、壁、といった変哲ない室内の情景と、そこにいる男と女の雰囲気や香りを感じるね

汽車が駅を出ていった、うしろに二つの光を残して
汽車が駅を出ていった、うしろに二つの光を残して
青い光は俺のブルース、赤い光は俺の心

ストーンズが演奏して有名になったラブ・イン・ベインの最後のコーラスである。愛した女が汽車で行ってしまう、という内容。汽車が駅に入ってきて、彼女を乗せて出てゆく、という単純なできごとを歌っただけで、ひどくもの悲しい情景を感じさせるところはすごいね。

今朝早く、おまえがドアをノックしたとき
今朝早く、おまえがドアをノックしたとき
俺は言った「よう、悪魔か、出かける時間だな」

このあと、悪魔と並んで歩いて、女を殴りにいったりするんだけど、どうにも抑えようのない凶暴な心を感じるね。くたばるまで、何かに、歩かされている、といったふう

ヴィックスバーグからテネシーまで女はごまんといるが
ヴィックスバーグからテネシーまで女はごまんといるが
フライアーズポイントの女は、俺の上にまたがってはねまわるんだ

ロバートジョンソンは女にめちゃくちゃもてたらしい、まあ、あんな演奏ができれば当然か(笑) あの、暗い、張りつめたような情熱と、すさまじい才能を持ってやってきた男を、ま、女は放っちゃおかないわな

俺は飲んだくれ男、ひどく悲しい人生ってやつらしい
俺は飲んだくれ男、ひどく悲しい人生ってやつらしい
生き方を変えることもできただろうが、俺には意味のないことだ

これはブルースの定番フレーズ、彼の時代、こんなヤツがごまんといたんだろうねー。もっとも今だってゴマンといるけどね。いつの時代にもブルースはある、ということか。

さて、最後に彼の演奏について一言。いままで、彼の音楽の、偏執狂的な暗い部分ばかり言って来たけど、彼の演奏には、独特の、軽快さ、お茶目な感じ、楽天的な感じ、というものが混じっていて、それゆえにとても魅力的なものになっていると思う。ひょっとすると、これらは、何というかニューオリンズ・ジャズ的な感じそのものでもあるので、彼の音楽環境そのものということかもしれない。明るいものの上に、深刻な暗いものを築いた風でもあるし、暗いものの上で、明るく表現した風でもあるし、こういうごちゃごちゃが、黒人ブルースの魅力でもあるんだね。

ちなみに、ロバート・ジョンソンの訳詞はここをどうぞ。

ストラトを強奪した話し


二十年以上使い続けている現用のストラト

いまからおよそ二〇年前、僕は地元大森のスナック系ライブハウスに入り浸り、夜な夜なサントリーレッドで飲んだくれていた。その店にはたくさんの常連がおり、年齢も、素性も、性格もみごとにバラバラだったが、唯一、ちょっとアナクロな音楽好きということだけ共通だった。その中のひとりに「シオノギ」というニックネームのヤツがいた。その名のとおり、昼間はシオノギ製薬で働くただのサラリーマンなのだが、夜になるとスーツ姿でここに現れ、やはり飲んだくれて帰って行く。彼の特技は、ものまねをまじえた一人寸劇であった。その技術は往年の竹中直人ばりのもので、ずいぶんと客に受けたモノであった。その彼も実はギタリスト、しかしギターはほとんど弾かず(たぶん上手くなかったのだろう)、もっぱらギターのコレクションが趣味であった。自宅には、秘蔵のエレキがいくつもあるとのこと。

ある夜、そいつと飲んで、レロレロになったときのこと、ギターコレクションなど毛ほどの興味もない僕は
「オマエ、ギター集めてばっかで、それでドーするんだ、まったく。ギターってのはな、弾いてこそギターだろうが、このバカモン」
とからんだのであった。こんなニベもないことを言われたら、彼も言い返せないではないか。彼も酔っぱらっており
「そうだ、確かにオマエの言うとおりだ、弾いてくれた方がいいに決まってるわな」
とか言って反論しない。それをいいことに僕は
「オマエが一番気に入ってるとかいうそのギター、オレが弾いてやるから売れ」
と迫ったのである。さすがに、そいつは一瞬たじろいたのだが、もう後には引けなくなっており、さらに酔っぱらってもいたので、思いっきり強気に
「オウ、オウ、分かったよ、売ってやるよ、そのかわりちゃんと弾けよ、このバカモン」
と、僕の要求を受けてしまった。

それから値段交渉に入ったのだが、そのころになると彼も急に酔いが醒め、かなり正気に戻ってしまったようで、なんかイヤイヤながら、でも引っ込みがつかない、という風であった。一方、僕は、そんなことは気にもせず、結局、彼の買値の半額の4万円だかで買うことになった。
「じゃ、次にここに来るときそのギターもってこいよ、わかったな、オレも金もってくるから」
ということで無理くり交渉成立と相成ったのである。

次に、店で待ち合わせしたとき、たしかに彼はギターを持ってきた。しかし、まだ飲んでおらずシラフだとということもあり、思い切り売りたくなさそうな態度であった。僕は、そんな彼には気にも止めず、ちょっと見せてくれよ、とケースを開けさせた。今思うと、まるで、他人の器量よしの一人娘を連れてこさせ、値踏みして、金で奪い取ってしまうような感じであった。ケースから大事に大事にギターを取り出して、手にした彼は、あれこれと説明し始めた
「あのな、これはフェンダージャパンが出来てすぐに製造されたストラトでな、値段は高くなかったけど、品質は抜群なんだよ。ほら、このネック見てみな、きれーいな猫目もようが入ってるだろ。こんなネックはいまじゃ探したってなかなかないんだぜ、云々」
と、もう、ギターに頬ずりせんばかりのかわいがりようである。さらに
「ここ、この、ほらボディのところに一個所だけ傷があるんだなあ。これさえ、これさえ無ければ完璧なんだがなあ」
と指し示してくれた傷は、実にかすかなもので、ギターを大切にしたことなどなかった僕は
「へえー、ぜんぜんわかんねーよ、ほとんど新品じゃねーか」
と取り合わず、冷たく、事務的に
「じゃ、これもらって行くぜ、はい、これ金」
と言い放った。すると彼は、まさに一人娘を手放すときの父親よろしく
「大切にしてやってくれよ、な、たくさん弾いてやってくれよな」
などと言ったものだった。実は、そのとき彼は、当時付き合っていた彼女と一緒だったのだが、一部始終を見ていた彼女、さすがに彼を良く知っていたのであろう
「ほんとに売っちゃっていいの? 売りたくないんだったら売らなくてもいいんじゃない」
などと助け船を出している。彼、ちょっと声を大きくして
「いいんだよ! 売るって約束したんだから!」
などと虚勢を張っている。そんなうるわしい二人のやりとりを目にしても、僕は何とも思わず
「わかったよ、おまえの分まで弾いてやるからさ、だいじょぶだって」
と、とうとうその、彼の溺愛するギターを手に入れたのであった。今思えば実に可愛そうなことをしたものである。

これは今でもそうなのだが、僕は元来ギターそのものにあまり興味がなく、ほとんど楽器を大切にするということを知らない悪いヤツなのである。安値で手に入れた器量よしの一人娘は、買われたその日から乱雑に扱われ、ぶつけるわ、倒すわ、引きずるわ、ということで傷だらけになり、彼があれほど気に病んだボディの傷などあっというまに分からなくなってしまった。ただ、約束だけは守り、このギターは、それからの僕の演奏でのメインのエレキとなった。会う人には
「友だちのギターマニアから買ったんだけどさ、かなりものがいいみたいよ」
などと宣伝し、まあ、ギターにとっては本望であっただろう。売った彼とも、それから飲み屋でときおり会うことがあったが、そのたびに
「あのギターどう? 弾いてる?」
と心配している。そこで
「うん、なかなかいいギターだ、もちろん弾いてるよ」
という会話を交わすのであった。ただ、もう傷だらけだぜ、とはさすがにあまり言わなかった気がする。ま、というわけでこのギター、二〇年たった今でも僕の現用のギターとなっているわけである。

まっぷたつに割れたギターのこと

シオノギってヤツが一人娘のように大切にしていたストラトを奪い取った話をした(むろん金は払ったが) このギター、あれから二〇年のあいだにさまざまな変遷を経て、今に至るのだが、おそらく元の持ち主が聞いたら即座に卒倒するであろう、大事故にも遭遇し、あやうくゴミと化すか、ということもあったのである。元持ち主への懺悔の意味も兼ねて、これからこのギターの変遷について話をしたい。

元来が楽器に愛着のなかった僕は、扱いが雑なだけでなく、気まぐれで改造などもしていた。まずは、ピックガードに穴を開け、ハーフトーンを簡単に出すためのスイッチをくっつけてみた。当時、5ポジションのスイッチというのがあるのを知らなくて、不便でしかたないのでスナップスイッチを付けてみたのである。それから、ブルースロックをやるようになった僕は、ご多分にもれずレイボーンを見習い、ギターマイクを高出力のシングルコイルに変えようと思い立つ。たまたまセールでヴァンザントのギターマイクが1万2千円だったので、3つ購入し、全部取り替えた。しかし、この僕がよく元々付いていたマイク3つを捨てなかったものである。後日、このオリジナルマイクをオークションに出したら非常に高値で売れた。ギターに詳しい友達に聞いたら、このマイクは本当のフェンダーオリジナルで結構希少なものらしいのである。うーん、やっぱり持ち主の言ったことは正しかったのである。

このギター、実際、おせじにも弾きやすいギターとは言えなかった。弦高が非常に高く、弾きこなすのに骨が折れる。で、とある先輩とバンドをやったときのこと、その人にギターを見せると
「なんだ、このネック完全にねじれてるじゃん」
とあっさり言われ、これって直るんですか、と聞くと
「この手のネックはソリは直るけどねじれはダメだね。ネック変えるしかねーよ」
とあっさり言われてしまった。そうか、ギターの知識のほとんどない僕は、今まで全然分かっていなかった。元持ち主は、このネックがいいんだ、と言ってたのになあ、などと思いながらも、しょうがねえ、じゃ、変えるか、とばかりにリペアショップでネック交換してしまった。せめてフェンダーのネックにすりゃいいのに、リペアショップオリジナルのネックにしてしまい、せっかくのフェンダージャパンのギターなのに、ヘッドに思いっきり「Crews ManiacSound」などと書かれたギターになってしまった。お店の人に、品質的にはフェンダーと変わらないですよ、と言われたからである。それにしてもネック交換はなんと4万円ぐらいかかった。お店に受け取りに行ったとき「元のネック持って帰りますか?」と聞かれた僕は、あっさり「いらないです」と言って店に置いてきてしまった。ゴミ箱行きであろう。元持ち主よ、許せ、君が頬ずりしていた、あの自慢のネックは煙と化してしまった。今となれば持ち帰るべきであった。

さて、哀れにも、このギター、マイク交換、ネック交換により、オリジナルはボディーだけ、ということに相成った。それでも、他に目立ったギターも買わずに、これを弾いていた。そして、ある日の夜の大事件であるが、当の事件については申し訳ないが伏せておく。あまりにプライベートな事柄だからである。その夜、このギターは、ソフトケースに入ったまま事故に遭い、そのままの状態で夜を明かし、翌日にあったバンドの練習日になってようやく発見されたという次第である。

こうしてみると相当に生々しい傷跡である。

事故に遭っても、ケースを開けもしなかった僕は、そのままギターを背負って翌日のオヤジバンドの練習に出かけた。さて、スタジオに入り、ソフトケースのジッパーを開け、ギターをつかんで持ち上げようとすると、何か変である。あれ? と思ってケースをめくって見てみると、なんとボディーが縦にまっぷたつに割れ、内部配線のコード類でかろうじてベロベロンとくっついているもの凄い状態なのを発見
「あっ、これは、もうダメだ」
という感じで、あたかも、車で人を轢いてしまい、車を降りてその人を見ると、胴体がちぎれて、筋や神経でかろうじてつながっているおぞましい状態を目にする、そんなときの反応に似ていて、一気に頭に血が上ったのを覚えている。さすがの僕も、これをバンドメンバーに見せる勇気はない。オヤジバンドの面々はそうそうたる大人たちであり、たぶん、これを知ったら一、二発殴られるんじゃないか、とも思ったのである。そこで、すぐにケースを閉じ、適当にごまかして急遽スタジオでギターを借りて、その場を乗り切った。

さて、家に帰り、ケースから取り出してみると、たしかにボディーがまっぷたつに割れ、さらにピックガード、ツマミなどがバリバリに損傷している。さすがの僕も、この惨状を目の当たりにし、けっこう呆然としてしまった。人間で言えば、ほとんど即死状態であり、張本人の僕はさしずめ刑務所行きであろう。それにしても、これを、どうしようか・・ こんな状態のギターをリペアショップに持って行くなどキチガイ沙汰にしか思えなかった。説教されたあげく、修理は無理ですね、とか言われるのがオチであろう。ああ、それにしても、元持ち主はこれを聞いたら許さないだろうな。僕もさすがにこの事件を機にかなり神妙に反省し、以前よりは楽器を大切に扱うようになったのは確かである。

さて、というわけで、もうほとんど使い物にならないのなら、自分で出来るところまで直してやれ、ということにした。幸い、僕はけっこう器用なのである。特大のエポキシ接着剤を買ってきて、ボディをくっつけることにした。梱包用のバンドで締め付けること24時間、ボディーはかなりしっかり接着できた。ただ、僕は接着剤を信用していないので、この状態で弾くのはイヤだ。ということで、実に実に乱暴にも、たまたま持っていた幅2cmほどの波クギを、接着した割れ目に7、8個ほど金槌でガンガンと打ち込んだのである。できあがりのルックスは完全なフランケンシュタイン状態。これがちゃんとしたリペアなら、接着後、塗料をはがし、やすりがけし、再塗装して割れ目を分からなくするところであろう。しかし、僕の修理は、傷跡も生々しく、波クギが打ち込まれ、これを見るたびに、自分の非道ぶりを思い起こす、という感じで、逆になかなか懺悔が入った仕上がりなのである。

ピックガードは新しく購入し、内部配線もやり直し、このギター、どうにか奇跡的に息を吹き返した。修理を終えて弾いてみると、うん、使えないことはない。ネックのアラインメントが多少ずれたようだが、まあ、弾ける。とはいえ、やはり、弾いていて心許ない感じがある。何というか、やはり瀕死の重傷から復活したギターというもの、弾く人の無理は利かず、なんかギターに安心して任せられる安定感というものに欠くのである、当然であろう。バンド活動もコンスタントに続けていた僕は、信頼できる、弾いていて安心なギターがやはり欲しく、ギター好きの友達に、新しいギターの購入の相談を持ちかけ、主力楽器を購入することにした。

その人が推薦してくれたのが、フェンダーUSAのアメリカンスタンダードであった。お茶の水へ買いに行き、定価の半額の7万円ほどで、シルバーブルーのものを購入した。さすがに、長年培われた技術をベースに作られたオーソドックスな新品のギターというのは違うものだ。弾いていて、実に安心感、安定感が感じられるのである。まっぷたつギターに付いていたヴァンザントのマイクをこのアメリカンスタンダードのマイクと交換し、しばらくは、このストラトを使って演奏していた。当のフランケンギターは捨てるのは忍びなく、お蔵入りとしておいた。

ブラスプレートには"RyojiIwamoto"の文字がある。シオノギすまん!

ギターというのも難しいもので、しばらく弾いているうちに、どうもこのアメリカンスタンダードの音が気に入らなくなってきたのである。一言で言って、堅くて、余裕がない音、という感じなのである。なんというか、一部の隙も、ガタもない、という感じで、アメリカンカントリーロックなどには最適であろうが、僕がやろうとしている、ブルース、ロック、ジミヘンばりのファンクなどのルーズな感じにはどうも向かないことがだんだん分かってきた。さて、そこでしばらく放置してあった、かの「生還」したギターを弾いてみると、なんか、ルーズな感じがとてもいいことに気がついた。おそらくボディなどの内部亀裂などのせいで、プレイの様々な局面で、不正振動や不正共振を起こすらしく、それがいい感じなのである。そのころ一緒にやっていたジャズファンクのサックスの人にも
「このフランケンのほうがぜんぜんいい音じゃん」
とか言われ、どうやら、僕だけのひいきではないらい。確かに弾きにくいのは確かだが、この予想のつかない鳴り方には捨てがたい魅力があるのである。

結局、アメリカンスタンダードは、ヴァンザントのマイクをつけたままオークションで売ってしまった。落とした人は、かなりの高値をつけてくれ、さらにとてもいい音がすると感激のメールも頂いた、いいことである。やはりギターは、気に入って弾いてくれる人の元へ納まるのが一番である。で、結局、僕には、このフランケンギターがいいらしいのである。現在、いくらか心許ない部分をリペアし、このギターで勝負、と行くことに決めている。

それにしても、元持ち主の、ニックネーム「シオノギ」よ、本名「イワモトリョウジ」よ、オレの非道を許せ。なんといっても、紆余曲折を経ながらも、二十数年間、このギターは、青春時代から現在までのオレの人生と共に過ごし、あるときは人生の困難な局面に一緒に立ち会い、移り気なオレに振り回されながらも、あるときは一緒に音楽を語ったのである。

音で聞く、驚異のギターソロ

ジミ・ヘンドリックス

デイ・トリッパーのイントロのリフのすごいリズム感
スタジオライブでビートルズのデイ・トリッパーをやってるんだけど、イントロのかの有名なリフを弾く、このジミヘンのリズム感は、なんど聞いてもオロドキ。 第1音の6弦の解放を弾いたあと、こう、なんというかリズムが横滑りして行くような、会場全体を引きずり込んでゆくような、圧倒的な引っ張り方。スゴイね~
 JimiHendrix, "Day Tripper" (BBC Sessions)

超ダサイフレーズの堂々びき
エレクトリック・レディランドのスタジオライブのこの曲、全編すごいのだが、歌詞の3番「おまえが寝てるあいだにおまえを愛しに行くぜ」などときわどいセリフを歌った後にでてくるこのフレーズに注目! このめちゃめちゃ野暮ったいフレーズをこのタイミングで堂々と弾くこのセンスがすごいんだよなー
 JimiHendrix, "Voodoo Chile" (Electric Lady Land)

ブードゥーチャイルの音色の根性コントロール
音4つの単純フレーズだけど、4音目に向かって、なんかねじれたような音色になって行く。声でいうと声色を変えるのと同じで、指使いとピッキングのマジックでこんな音出しちゃうんだね。ギターのセットアップはまったく変えてないので、これはもう根性でこういう音出すんだよな。まるでしゃべってるみたいだ
 JimiHendrix, "Voodoo Chile" (Electric Lady Land)

マシーンガンの戦場に吹きすさぶ風
バンド・オブ・ジプシーズのライブのこの曲は、どこを取っていいか分かんない凄まじい演奏なんだけど後半に突入するところを選んでみました。歌が終わり、フィードバックのダーティーな音が流れて、ちょっと間をおいたかと思うと、突然現れる、この、戦場に吹きすさぶ風の音。何度聞いても唖然として、放心しちゃうな。ベトナムの戦場に飛び交う霊がギターに乗り移ってるね
 JimiHendrix, "Machine Gun" (Bandof Gypsys)

同じくマシーンガンの戦場で死に行く人
終盤に出てくるこのフレーズ、僕には、弾に打たれて倒れた人間の、意識が遠のいて行って、で、血がドクドクと流れ出して行く、そんな光景に見えるんだよね。レニー・クラビッツが、この曲を聴くと1週間は寝込むよ、とか言ってたけど、そうだね~。この演奏と、ウッドストックで演奏された、苦しみ、のたうち回るアメリカ国歌。この今現在、ジミーにもう一回演ってもらいたいよ
 JimiHendrix, " Machine Gun"(Band of Gypsys)

スティーブ・クロッパー

オレはなんでこんなに下手なんだソロの2コーラス目のすごい締め
スティーブ・クロッパーは抜群のサポートギタリストだけどソロは苦手。その彼がこの曲では珍しく2コーラスのソロを取ってる。うーん、2コーラス目にしてすでにネタ切れっぽい、しかし構わず男らしく弾いている。そして最後の締めの2小節でフレットを押さえる指は力が入っちゃって、よく聞くと3回もミスタッチで音が切れて、もうボロボロである。そして、最後の最後、フレーズの終わりで「クソッタレ! オレはなんでこうヘタなんだ!!」という感じで、押さえてた左手を一気にビュン!とスライドさせる、ここに注目。何度聞いてもホントカッコいい。ギターはテクニックじゃなくて、モチベーションの大きさだ! ということが分かる名演。
 Steve Cropper , "Soul Dressing" (The Best of Booker T &MG's)

ジェイムズ・ブラッド・ウルマー

何が言いたいかまったく不明なすごいソロの入り
驚異のヘタウマギタリストとして名高いウルマーであるが、これはタイム・テーブルのソロの入りの部分である。しかし、この翻訳不能なフレーズは一体なんなんだー! 一体この人は何語をしゃべってるんだろう、まったく不明である。なんというか、何か分からん言語が文字バケして表示されている、そんなフレーズだね。しかし、その意味不明な演奏が、ロバートジョンソン以来の黒人音楽直系に聞こえるんだから人間の耳って不思議だよね
 James Blood Ulmar, "Time Table"(No Wave)

ジョニー・ウィンター

ジョニー・ビー・グッドの気にしない系超かっこいい適当な弾き方
ジョニー・ウィンターの高音弦のトレモロへのアプローチってカッコいいんだよね。これもそのひとつ、超ワイルドなこの弾き方、カッコいいね~。おまけに弾きながらなんか叫んでる。ちょっと聞くとミストーンぎりぎりに聞こえるけど、よく聞くと、3度と5度の和音のトレモロを一拍ぜんたいに半音上げてる。これ、テンションコードを使ったジャズではOKだけど、テンションなしで強引にやっちゃってる。わざとか偶然か分かんないんだけど、そんなの気にせずネイチャーで適当にやっちゃうところは天性のブルースギタリストだよな~、って感じでシビれるよ
 Johnny Winter , "Johnnie B. Goode"(The Collection)

いやー、みんなスゴイ!!

レット・イット・ビーを宅録してみました

KAZUさんという人をたまたま知っていて、彼のビートルズ宅録サイトを誰かから教えてもらったのをきっかけに、宅録ワールドなるものに接することになった。ビートルズの宅録リンク集をあれこれあさってみると、これがまたものすごい世界で、みな、ひたすらビートルズの曲を多重録音してはサイトにアップしている。また、そのほとんどが完全コピーもので、原曲にいかに近づくか、ということがテーマになっている。と言うか、ほとんどこれはお遍路さんというか、巡礼というか、膨大な数のビートルズの曲を一曲一曲独りで訪ねて歩く一種の自己修行のようにも見える。音楽は人前で演ってナンボじゃ!と、人前では常々言い放っている僕だが、これは体面上そう言っているだけで、実は一人多重録音にはまる気持ちはよく分かる。というか、僕もむかーし、カセット多重録音でビートルズの宅録にはまったことがある。また、これが不思議なことにビートルズに限ってで、他の例えばストーンズとかクラプトンとかはやる気になれない。ビートルズって、曲とアレンジが一体になっていて不可分の曲が多く、またほとんどすべての音楽ジャンルをカバーしている(特にポール)ので、完コピ宅録心をあおられるのだと思う。これがストーンズなんかだと「ホンキートンクウーマンはロックンロールで。そんで、テルミーはバラード、ミスユーはディスコのリズムでね」というように、曲に定型アレンジを組み合わせることが多いので、完コピの張り合いがないのであろう。

KAZUさんのリンク集やBBSをのぞくと、そこは完全な「ワールド」になっていて、案の定というか何というか、そこには宅録ビートルズの金字塔と呼ばれるものがある。それはキンタさんという方による、かのアビーロードLPまるまる一枚の完コピ宅録である。アビーロードの、特にB面は延々と続く切れ目のないメドレーで、あれを完全再現するにはかなりのテクニックと根気が必要である。この方のサイトは残念ながら現在閉鎖中(理由は後でね)なのだが、これを賛美するKAZUさんその人も、ラバーソウルを丸コピし「カバーソウル」なるCDを自主リリースしたり、現在は、なんと、かのサージェントペパーズLPの丸コピという、聞いただけで萎えそうな大変な挑戦を一曲一曲やってのけている(このサイトも近々同じ理由で閉鎖だが) それにしても、まー、ホント、完全に病気の方々である(笑) というわけで、この僕も、アルバム丸ごと宅録、ってのをやってみることにした。ただし、完コピは面倒くさいので、完全カバーと言うか、オールアレンジもの、しかもさわりだけ、というスタイルでやることにした。題材は、僕がビートルズのアルバムの中で一番好きなレット・イット・ビーである。さて、これを以下にアップした

SIDE A
1. Two Of Us
2. Dig a Pony
3. Acrossthe Universe
4. I Me Mine
5. Dig It
6. Let It Be
7. Maggie Mae

SIDE B
1. I'veGot a Feeling
2. One After909
3. TheLong and Winding Road
4. For You Blue
5. Get Back

いやー、なんだかんだで大変だった。最初に2、3曲やったときは、おー楽しい楽しい!などと思ったものの、それから先は、ほとんど言い出したから後へは引けない、という理由で仕方なしにやってるみたいな感じになり、「ノルマ」や「義務感」で続ける、という風になってくる。当然誰に命じられたわけでもなし、勝手に自分でやっているのである。しかし、これ、ほとんど仕事と同じノリで、つくづくサラリーマンの我が身を因果だなー、と思ったり、「人、皆、趣味を仕事にしたいけど、それができない。だからこんな風に趣味をミニ仕事にするのかなあ」と思ったりしつつも、最後は超適当に一応できあがった。しかしほとんど達成感がない。たぶん出来が悪いせいであろう。ま、いっか、ここに超適当な録音エピソードでも載せておこう。ところで、前述のきんたさん、KAZUさんといった人たちがサイトを閉鎖した理由は、どうやらかの著作権団体からの勧告があったからのようである。まったくつまらないことをするものである。もし金儲けをしたいならこの手のサイトへの勧告は儲けに反するし、もし著作権の理念を守りたいのなら、理念の古い解釈が世の中の進歩を阻害しているし、ま、このどうしようもない世の中と同様、過渡期にいるんだと信じたいところだね。しかし、僕の、このアホみたいな宅録に対してもどっかで見つけて勧告して来るのかなー