■飲茶について

香港の大衆食文化としては、大衆料理店の食事に加えて、世界的にも有名な飲茶(ヤム・ツァ 広東発音)について述べる必要がある。ここでは簡単に紹介しておくことにする。

飲茶とは一口で言えば「お茶を飲みながら点心を食べる」ことであり、点心(ディェン・シン)とは「ちょっとつまむもの」といった意味で量が少ないのが前提である。大衆料理店の食事的な料理も量が少なければ点心として扱われ、これは小食と呼ばれる。これに塩味の点心(鹹点心)と、甘味の点心(甜点心)と果物類を加えて、次のように飲茶で供される料理の全体になる。


飲茶で供されるもの
  │
  ├─点心─┬─鹹点心(塩味の点心)
 │    │  例:蒸餃子、蒸シュウマイ、蒸饅頭、パイ、春巻き、揚げワンタンなど
 │    ├─甜点心(甘味の点心)
 │    │  例:パイ、団子、タルト、カステラ、羊羹、しるこなど
 │    ├─小食(ちょっとした食べもの)
 │    │  例:汁ソバ、焼きソバ、チャーハン、焼き物、鹵味飯など
 │    └─果子(果物、ナッツなど)
 │
 └─ 
    例:烏龍茶、普洱茶、ジャスミン茶など


以上のように、鹹点心として日本でよく知られているのは、蒸し餃子、焼賣、肉まんなどであろうが、そのほか実に種類が多い。甜点心もタルト、パイ、ようかん、しるこなどなど数多く用意されている。ちなみにこの甜点心については町の至るところに店頭のガラスのショーケースにこれらを並べたいわゆる甘味処が人気がある。

さて、香港では朝から夕方までが飲茶タイムであり、ほとんどの料理店が飲茶を用意している。点心の種類の多さからいえばやはり高級から中級までの大きな料理店に入るに限る。小さな大衆食堂では数種類の点心が用意される程度である。特に昼どきになると大きな店もまたたく間に満席となり、大勢の売り子がワゴンあるいはお盆に点心を乗せ客席の間を回る。

席につくとまず茶を何にするか聞かれるが、言葉が分からなくてもとにかくポーレイツァ(普洱茶)と叫ぶことをお勧めする。外国人だとたいがいジャスミン茶が出されるが、日本の飲茶のように上品であくの強くない点心だけならジャスミン茶もよいが、香港のそれはやはりくせのあるものも多く、一緒に飲むお茶は現地人と同じく普洱茶に限る。普洱茶はウーロン茶をカビ臭くして独特のくせを与えたようなお茶であるが、不思議と料理のくせを和らげてくれ、油を洗い流してくれるようで、さっぱりとたくさん食べられる。ちなみにお茶がなくなったら、急須のフタをずらしておけば湯を注いでくれ、何度でもおかわり自由である。

点心の値段は今でもやはり安い。下に写真をいくつか載せておくが、これらが2008年当時で一皿100円から150円、そしてお茶代が120円であった。500円あれば腹いっぱい食べられて、お茶飲みほうだいで、長居OKなので、とても経済的でなにより楽しい。特に2人以上で行くと安値で10種類ぐらいの点心が食べられて、お得である。


 
牛肉ボールの蒸し物 (山竹牛肉球)

ユバ巻きのカキ油タレかけ蒸し(蠔皇鮮竹巻)

 
骨付き豚バラ肉の豆豉蒸し(豉汁蒸肉排)

又焼包(チャー・シュー・パオ)

 
エビと挽肉のあんをつめた揚げ物 (安蝦鹹水角)

 

 

以下は飲茶のメニューの例。参考までにこの新楽酒楼は、九龍のJordan(佐敦)駅近くのSHAMROCK HOTELにあるレストランである。広くてきちんとした中級レストランだが、昼時は飲茶タイムで下のようなペラ紙がテーブルに乗る。大中小特頂は値段のグレードである。注文は、この紙の空欄に印をつけてウェイターに渡すと持ってきてくれる。昔はこの店もワゴンが主流で、回ってくる点心を目で見て選んで取るとワゴンのおばちゃんがこのペラ紙メニューに小さなハンコを押して料理を渡してくれたものだが、今ではワゴンはほとんど回らず、注文式になっている。

 
新楽酒楼の飲茶メニュー

GO HOME