世渡風俗図会

清水晴風

はじめに

薬売り

朝鮮人のかっこうをして薬を売った。
明和の年のころにこの行商が流行した。

とぞ申しけり

この乞食は、安永のころ、もっとも有名になったという。
三味線で弾き語る男で、浄瑠璃を、おかしな声で語り、
さいごに「とぞ申しける」と付け加える。
門から門をこうして物乞いして歩いたという。

こんこん坊

安永のころ、こんこん坊という有名な
乞食があったという。
これは坊主であるが、出っ歯で口がとがっているのが狐に似ていると
皆がこんこん坊とはやし立てたが、
自分からあだ名を利用して、物乞いをしたそうだ。

白玉水売り

夏になると、江戸の町のどこへ行っても、白玉売りの
「しゃっこい しゃっこい」
という声が聞こえないところはない。
もう一つはところてん売り。これも白玉売りについで
夏のもので、大繁盛だ。
「ところてんや かんてんや」
と言って売り歩く。

千手観音

千手観音の像を背負って、手に持ったカネを鳴らし歩き
お賽銭をもらう、という一種の物もらいである。
今の子供たちは、背中合わせに背負うことを
「千手観音」というのはここから来ている。
これは六十六部の巡礼者のようなものである。

納豆売り

「納豆 納豆 永井町醤油のもろみ 新菜漬け 新菜漬け」
納豆は、湯島台に製造している問屋がある。
もし、納豆を売りたいと思う者がいたら
その問屋へ行って依頼すれば道具一式を貸してくれることになっている。
納豆を作る大豆の原料は、白川大豆といって武州の赤羽でできるものが
いちばん品質がいいと言われている。
他のものは風味がひどく悪いそうだ。

竹売り

この竹売りは、お盆の精霊会や
年の節句の飾り竹などを
売りに来る者である。

「竹や/\/\/\/\
             竹や」

アサガオ売り

アサガオ売りは、夏の終わりから秋にかけて、毎朝
「アサガオや アサガオや」
と言って、町中を売り歩く者である。
アサガオは、入谷で栽培されるのがいちばんよいとされる。
毎年毎年、変わった花を生み出して
これに、それなりの名前を付けて
売ることで繁盛するという。

砥ぎ屋

はさみ、包丁や小刀を
砥いで、錆を落とした。
のこぎりの目立てもした。

おでん売り

「おでんや おでん 甘いと 辛い」
こんにゃく田楽と燗酒を売ったという。