(フェデリコ・フェリーニ)

かのフェリーニの映画をとうとう見た、やはり本当にすばらしいもんだね。野卑で、利己的な、怪力男の大道旅芸人ザンパノの弟子として金で売られて、芸を仕込まれ、荷台付きバイクに乗って土地から土地へ渡り歩く、まるっきりうぶな女ジェルソミーナの悲しい物語・・もう、こう書いただけで、古典、という感じだよね。このジェルソミーナを演じているのが、フェリーニの奥さんなのだそうだ。最初、出てきてしばらくは、なんとまあ変な女の人だろう、と思った。なんか、こう、表情やジェスチャーがとても、ぎこちないというか、演劇っぽいというか、そんな感じ見えたのが、知らぬ間に、これしかありえない、という感じに魅力的に見えて来るんだね。アンソニークインのザンパノもかっこいいねえ、イタリア語の響きっていいね。物語的には、悪い男と無垢な女、という風に描いているものの、それよりなにより、二人とも嘘のない地のままの人間だ、という感じを与えるところが一級の人間劇だよな。風景も、映像も美しいし、全編、それこそあふれるような情緒で、濃厚なミルクのような映画だった。ところで、ジェルソミーナがザンパノに、「ねえ、こうしようよ」という感じで言うときの「ザンパノ」という呼びかけが、日本語の呼びかけのイントネーションにそっくりで、何か不思議だった。