パリ、夜は眠らない
(ジェニー・リヴィングストン)

ハーレムのボールと呼ばれるクラブを中心として、ニューヨークの下層社会に生きる黒人ゲイの生活を描いたドキュメンタリー。有名人になって金持ちになってパリで豪奢な生活をすることをひたすら夢見るゲイたちが、ボールでやっているゲイ・コンテストに次から次へと出場する。全編これテクニカルターム、というか隠語のオンパレードで、コンテストはいくつものカテゴリーに細かく分けられていて、そこで爆発しているエネルギーは、僕が聞き知っている、昔のブルース全盛期のころもかくありなん、というものだった。こんなところで生まれた代物がやがて世界を引きずり込んで行くんだね。しかし、ブルースでもそうだけど、この荒削りな、鋼鉄のバネのような、ほとんど無闇に発散されているエネルギーの坩堝のような世界は、外の人には決して真似できないや。アメリカの貧しい黒人たちにはいったいどんな凄い神様がついているんだ? と思ってしまった。