連続殺人者の告白
(イアン・ケルコフ)

十人におよぶシリアルキラーの独白、インタビュー、物語を、いろんな映像と一緒にコラージュのように構成したアート作品。かなり、こわくて、気分が悪くなる映画だけど、あの連中らが単に狂っている、とはとても単純に言えないことがよくわかる。歴史的に言ってシリアルキラーには頭の悪い人間はあまりいないらしいが、確かにそう思える。この映画、すべてのセリフが彼ら自身のものというわけではないらしいが、それにしても、あるときは、詩の朗読のようだったり、苦悩に満ちた独白だったり、政治的アジテートだったり、哲学的だったり、すなわち、シリアルキラーは素材として見ればアートそのものなんだね。しかし、全編を見ていて思ったのは、この異常な世界に圧倒的に欠如しているのは愛情だ、ということだった。うーん、でも、僕らが日常を生きているこの世界だってお世辞にも愛情に満ちている、とは言えなくて、チャールズ・マンソンが言うように「みんな自分をごまかしてウソの中で暮らしてる」ということになると厄介だ。愛情が極端に純粋になると、戦いや、悲劇や、なにやらと、同じようなものを生むしね。そう考えると、愛情のいちばん大事な働きは、じつは、寛容というものじゃないかな、と思えたり・・、なにかといろいろ考えてしまったよ。そう、それから、素材がいいせいもあって、アートとしての映像は、僕にはとてもカッコ良く見えた。