裁かるるジャンヌ
(カール・ドライヤー)
「苦悩」を描いた映画としてはこれ以上のものは無いんじゃなかろうか。ジャンヌ・ダルクがイギリスの教会で裁判され、最後に火刑に処されるまでを描いた白黒の無声映画である。ショットのほとんどが、ジャンヌと僧達の顔のクローズアップで、ふつうのショットがほとんどないのである。無声なのでセリフはすべて挿入される文字タイトルなんだけど、セリフ量はけっこう多い。キリスト教を背景にした、神、愛、教会の権威、民族愛、正義、勇気、といったものが執拗に語られているところなど、これなら本で読んだ方がいいかなー、と見ながら思ったものの、やっぱり、特にジャンヌの顔のアップが見せる、休みのない苦しみと、僅かな、しかし必ず裏切られる希望の表情の微妙な推移は映画ならではだね。というか、もっと言うと、強烈にロマンチックな映像で、苦悩を通り越して陶酔まで紙一重のような、そんな映像だった。