ジェイコブス・ラダー(Jacob's Ladder)
(エイドリアン・ライン)

かの大ヒット映画「危険な情事」を当てたエイドリアン・ライン監督が、儲けたお金で今度は自分の作りたい映画を撮ったのがこのジェイコブズ・ラダーだったそうだ。結果は興行的には失敗だったそうだが、そんな事情を知らない当時の自分は、この映画を見て虜になり、まあ、数え切れないぐらい何度も見た。主人公のジェイコブを演じているのが、若かりしころの、かのティム・ロビンス。彼は、ベトナム戦争から負傷して帰還して腑抜けのようになり、博士号まで持っている秀才なのに郵便配達をしてその日暮らしをしている。はにかみ屋で、優しくて、心に傷を負ったこのジェイコブが、好きでね、これを見たときに最初に感じたのは、この映画の主題は「深い良心の呵責」だと思ったよ。広瀬巳喜男の浮雲もそうだけど、この手の映画に自分はときどきたまらなく惹かれることがある。まるで、自分を、見ているような気になるんだ。この映画そのものは、恐怖サスペンス映画で、SFXを一切使わない恐怖シーンの数々はどれもとても印象的だ。でも、それでも、それよりも、僕はこのティム・ロビンスのジェイコブのナイーブさが好きになってしまったのであった。あ、そうそう、あとジェイコブの愛人のジェジーが、これまた自分の大の好みの女性で、聡明で、怒ると怖くて、でもたまにすごくチャーミングな表情をするところが素敵だ。この映画が好きなのは、それもあるかも(笑)